2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Fine-pitch Silicon Strip Detector for Precise CP Violation Measurement in B Meson Decays
Project/Area Number |
19H01912
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
中村 克朗 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (60714425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坪山 透 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (80188622)
岸下 徹一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80789165)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 半導体検出器 / シリコン / ストリップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、超高輝度加速器を用いた素粒子フレーバー物理実験であるBelle II実験において、将来の加速器性能向上を見据えたシリコン崩壊点位置検出器のアッ プグレード計画として、薄型挟ピッチの両面読み出しシリコンストリップ検出器を新たに開発することが目的となる。この研究目的のために、厚み150um以下・ス トリップピッチ50umを持つセンサー、およびノイズ1000e-以下・信号時間幅60ns程度の読み出しASICの開発が目標となる。 2021年度は読み出しASIC試作品の性能評価試験を行なった。まずは性能評価のための試験基板を設計・開発した。加えて、市販のFPGA評価基板を用いて試験基板とPCとの間を仲介しSNAP128の制御とデータ収集を担う回路を開発し、このファームウェアの設計を行なった。これにより、PCによる読み出しASICのシェーパー出力波形・ゲイン・ノイズ測定を可能にした。測定した結果から、波形成形後の信号時間幅はシミュレーションでの予想とほぼ一致しており、約60nsであることを確認した。測定された時間幅は要求値を満たしている。一方、ゲインに相当する波高はシミュレーションの70%程度となっていることを確認した。こちらは検出器での運転には許容範囲内である。 さらにゲイン・ノイズの検出器容量依存性も測定した。検出器容量として想定されるのは約15pFである。ゲインはシェーパー出力波形の結果で示したようにシミュレーションに対して約70%となっている。ノイズの結果は、検出器容量が15pFのもので、約1200e-となった。これはまだ要求値1000e-を満たしていない。 ノイズの改善策としては、1つ目に評価基板の配線上の寄生容量の理解があげられる。これにより検出器容量を過小評価していると思われる。2つ目にシェーパー時定数やセンサーサイズ(ストリップ長)を変更することも検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試作センサーおよび試作読み出しASICの性能評価が個々で完了して、それぞれの特性を理解することができた。基本的な性能としては、大部分で想定通りであり、来年度組み上げて試験検出器を作ることにより、本研究の最終的な目標である検出器としての性能評価ができるようになる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究により、試作用の薄型・挟ピッチDSSDセンサーと読み出しASICの性能評価を完了した。2022年度は、試作DSSDセンサーとASICを接続して試作検出器を製作し、検出器性能を測定することで、研究の目的となるCP非対称度測定のための検出器として十分な性能を有することを検証する。さらにこれまでの研究で得られた成果をまとめて、さまざまな会議や論文で報告する。 試作検出器の製作のためには、まず専用の回路基板およびフレキシブル基板の製作する。これら基板の上にセンサーとASICを実装して検出器を組み立てる。この状態で、実機のセンサーの検出器容量がASICのゲイン・ノイズにどのように影響を及ぼすかを測定し、2021年度にすでに測定しているゲイン・ノイズと検出器容量との関係から、実機での検出器容量を算出する。またこれと同時に、LCRメータを用いて検出器容量を測定し、これらの評価値と測定値が一致することを確認する。 さらに、ベータ線源と宇宙線を用いて、センサーからの粒子信号を検出する。この結果から、信号/ノイズ比を算出して、十分な効率で信号とノイズを弁別できることを確認する。以上の性能評価試験から、試作検出器が当初の目標であるノイズへの要求値(目標1000e以下)、および信号時間幅への要求値(目標60nsec程度)を満たすことを検証する。また、センサーやASICの放射線照射試験を7月に行い、実験中の加速器ビームバックグラウンドの環境下で予想される放射線損傷を受けても、 検出器性能を維持できるかを検証する。照射試験は、東北大学のELPH加速器での90MeV電子ビームを用いて行い、最大50Mrad(1MeV中性子等量 で約1.0e+13neq/cm2相当)を照射する計画である。以上の結果と合わせてこれまで研究で行ってきた成果を国内・国外の会議で報告するとともに論文にまとめる。
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Research Products
(6 results)