2019 Fiscal Year Annual Research Report
インフレーション仮説検証に向けた0.1ケルビン冷却と高速スキャン技術の融合
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19H01916
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
小栗 秀悟 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (20751176)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長崎 岳人 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (00752346)
木内 健司 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00791071)
美馬 覚 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (50721578)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / CMB / 冷却システム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)観測によるインフレーション宇宙論の解明に向けて、CMB観測装置の高感度化のための技術の確立を目指している。高感度化には、「検出器の冷却」と「高速スキャンによる信号変調」が鍵であり、これらを両立させるために、回転台の上で希釈冷凍機を運用するための回転継手の開発を目標としている。 初年度は、回転継手のプロトタイプの開発を行った。本研究の新しい要素は、この回転継手を通して希釈冷凍機を運用することであり、そのためには配管内を負圧で運用する必要がある。従来の回転継手は高圧ヘリウムでの運用を元にしているため、設計変更が必要であった。変更点としては、回転部分のシール方法と、配管の仕様である。 シール部分は、シールの外側にダミーのラインを追加し、そこに漏れ出たガスを再びメインのラインに戻すことで、ヘリウム3、4の混合ガスの損失を防ぐ。最初の試験では、ダミーのライン部分に真空計を設置し、リーク量をチェックすることも検討している。配管部分は、負圧でのシール性を高めるために、KFタイプの配管を採用した。 これらの仕様検討を業者と行い、実際に試作をお願いした。現在、その試作品の性能評価の準備を進めている。評価中は、多量のリークが発生する可能性も否定できない。まずは真空引きを行ってリークテストから始め、希釈冷凍機と接続する際には、緊急時に回転継手周りを切り離して運用できるように、配管の設計を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、回転継手の開発が目的である。まだ性能評価は完了していないものの、試作品は完成しており、性能評価もすぐに始められる状況にある。次年度は、希釈冷凍機と組み合わせての研究開発を予定しており、そのための準備は十分にできている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、希釈冷凍機の配管部に、試作品の回転継手を導入し、希釈冷凍機のパフォーマンスのテストを行う。接続するための配管は、すでに手配を始めている。希釈冷凍機のパフォーマンスが低下する要因としては、回転継手内部の管の細さが考えられる。希釈冷凍機はヘリウム3の循環する量で性能が決まり、特にヘリウムの混合液(ヘリウム3希薄相)の真空度が問題になる。ポンプと冷凍機内部の配管のコンダクタンスが低いと性能が出ないため、もし回転継手のために性能が落ちる場合は、内部の径を大きくするなどの改善を行う予定である。
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