2019 Fiscal Year Annual Research Report
脱励起ラインガンマ線観測で解明する銀河系内宇宙線の起源
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19H01919
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
片桐 秀明 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50402764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 良治 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (80183755)
村石 浩 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (00365181)
加賀谷 美佳 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (10783467)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ガンマ線 / 宇宙線 / コンプトンカメラ / シンチレーションファイバー / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河系内の宇宙線がどこでどのように加速されているか?という宇宙線起源の問題は、宇宙物理学上の重要な問題である。特に (a)本当に、加速される高エネルギー粒子=宇宙線(高エネルギーの原子核)なのか?(b) 銀河内宇宙線のエネルギー収支は本当に成り立っているのか? という核心的な問いは未解明である。これらを明らかにするには、銀河宇宙線のエネルギーの主要な部分を担っている低エネルギーの宇宙線を直接的に探査できればよい。鍵となるのが、低エネルギー宇宙線が星間物質中の原子核を励起した後に生ずる脱励起ラインガンマ線である。本研究では、低エネルギー宇宙線の直接探査が可能な2-10MeVの脱励起ガンマ線に特化した高感度ガンマ線カメラの基礎開発を行い、その有効性を実験的に検証することを目的とする。カメラは研究代表者が考案したシンチレーションファイバーを用いた電子飛跡型コンプトンカメラである。具体的には、①大型プロトタイプカメラ2号機製作、②既存の小型プロトタイプ1号機による測定と解析手法の開発③ガンマ線照射試験、④検出器シミュレーションを行う。2019年度は主に①を進めた。 ①に関しては、予算の制限があるため宇宙線研究所の大型計算機システムを用いたシミュレーションによって実験室における現実的な測定での検証が可能なサイズかどうか評価しつつ詳細設計を行い、最終的に3.2cm×3.2cm×3.2cmの大型のプロトタイプ2号機を1mm角のファイバーで製作した。尚、このシミュレーション評価時に考案した解析手法を特許申請した。また、マルチアノード光電子増倍管(MAPMT)で生成した信号の読み出しに用いるEASIROC信号読み出しモジュール用の信号反転基板を開発した。EASIROCのASICチップ は正の信号入力に対応するため、MAPMTの負の信号を読み出すには極性反転が必要だが、ロスや歪みが少ないチップトランスを選定し、多チャンネル信号反転基板を実際に作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度中に①大型プロトタイプカメラ2号機製作を行う予定であったが、外国製品であるファイバー入手に遅延があり、2019年度予算の一部を繰り越して制作を行った。具体的には、2019年度にシンチレーションファイバーの詳細検討を行ったが、ファイバーの価格や直径の公差等に対する取扱業者からの返答が遅延したことにより、ファイバーの選定および確認に当初の想定より時間がかかり、12月納入となった。その段階で2019年度内の制作に入るか業者と議論したが、年度内に無理に工期を短くして制作をするとリスクが高いので、費用を繰り越し2020年度に作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、2-10MeVの脱励起ガンマ線に特化した低エネルギー宇宙線探査用ガンマ線カメラの基礎開発を行い、その有効性を実験的に検証することを目的とする。具体的には、①大型プロトタイプカメラ2号機製作、②小型プロトタイプ1号機による測定と解析手法の開発③ガンマ線照射試験、④検出器シミュレーション、となる。今後引き続き①②を開発するとともに、並行して③④を進める。 カメラは、シンチレーションファイバーを用いた電子飛跡型コンプトンカメラである。多数のファイバーで1枚のファイバープレートを構成し、1層毎に90度回転させてX, Y方向に重ねることで、ガンマ線のコンプトン散乱で生成される電子の3次元的な飛跡を得る。入射ガンマ線が3回以上散乱した場合、もしそれらの反応点およびエネルギー損失を測定することができれば入射ガンマ線のエネルギーと入射方向が決まり、吸収体が不要になる。2020年度は実験室レベルの放射線源でも多重散乱の測定が可能となる3.2cm×3.2cm×3.2cmの大型のプロトタイプ2号機を1mm角のファイバーで製作した。今後、信号の読み出し系を構築しシステムとして完成させることを目指す。製作したカメラに宇宙線ミューオンおよび実験室で用いることが可能なガンマ線源、ベータ線源を照射し、荷電粒子に対するエネルギー測定能力や飛跡のイメージング能力を検証する。プロトタイプ2号機が完成するまでに、科研費による研究以前に試作した小型プロトタイプ1号機でミューオンやベータ線等のデータを取得する。実データとシミュレーションデータと用いて、エネルギー測定、較正、飛跡解析の手法の研究をするとともに、ヨウ化セシウムシンチレータと組み合わせてコンプトンカメラシステムを構築することを同時に進め、2号機を動作させる際の知見を得る。
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Research Products
(1 results)