2019 Fiscal Year Annual Research Report
Demonstration of 100 TeV gamma-ray observation in the southern hemisphere
Project/Area Number |
19H01922
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川田 和正 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10401291)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ガンマ線 / 宇宙線 / ミューオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、南米ボリビア・チャカルタヤ山中腹 (標高 4,740m) に水チェレンコフ型のミューオン観測装置を完成させ、その建設の実現性・問題点を検証することである。現在、同地に空気シャワー観測装置の建設が進んでいる。この空気シャワー観測装置と本計画で設置するミューオン観測装置を連動させ、南半球の空を低バックグランド且つ広視野で100TeV(10の14 乗電子ボルト) 以上のガンマ線観測を実施する。特に、南天で明るい既知ガンマ線天体から100TeVガンマ線の初検出を目指し、さらに、銀河中心方向に空間的に広がったガンマ線を世界最高感度で探索する。本研究により未開拓の100TeVガンマ線の検出に成功すれば、銀河系内で発生している最もエネルギーの高い宇宙線の起源解明につながる。 本年度は、現地のインフラ設備の準備がほぼ完了し、空気シャワー観測装置のシンチレーション検出器を部分的に設置した。これらの現地の作業と並行して、地下水チェレンコフ型ミューオン観測装置のベースとなるデザインの設計を国内で進めた。また、ミューオン観測装置の内壁に使用する防水材および反射材の選定を行った。その他、空気シャワー観測装置およびミューオン検出器の検出器シミュレーションを開発し、空気シャワーの到来方向とエネルギーの再構成、およびミューオン検出器による宇宙線の除去率を最適化し、宇宙ガンマ線に対する感度を算出した。以上の進行状況について、国内外の会議において発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度、高圧電線の設置により実験サイトにおいて電気の仕様が可能となった。その他、継続的に準備を進めていた避雷針、フェンス、インターネット用の長距離無線アンテナ等のインフラ設備がおおよそ整った。実験サイトの中央には、データ収集装置を収めるための中央ハットが完成し、作業スペースと住居スペースが確保された。そして、2019年の8月から11月にかけて、ボリビアに滞在し空気シャワー観測装置の建設を開始し、日本人4人+現地の大学(サン・アンドレス大)の技術員数名で作業を行った。シンチレーションボックス内にシンチレータを収め、ボックス下部に光電子増倍管が装着される。2020年2月から3月にかけて、空気シャワー観測装置稼働へ向けてボリビアでの作業を予定していたが、新型コロナウイルス蔓延の影響で中止となった。新型コロナウイルスの影響が沈静化すれば、すぐにデータ取得を開始できる状況となった。 現地での作業と並行して、空気シャワー観測装置の地下に設置する水チェレンコフ型ミューオン観測装置の設計を進めた。ベースとなるデザインは水深1.5mの鉄筋コンクリート製の水槽を約2mの土被りの下に設置することを想定している。まず、国内の設計事務所にコンサルトをお願いしコンクリートの厚さ、水槽内の柱、梁の配置、地下建造物の強度の設計を行った。そして、これら設計を基に、空気シャワー観測装置およびミューオン検出器のMCシミュレーションの開発を進め、空気シャワーの到来方向とエネルギーの再構成、およびミューオン検出器による宇宙線の除去率を最適化した。最終的に宇宙ガンマ線に対する本計画の観測装置の感度を算出し、明るい既知のガンマ線天体が検出できることが確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、地上の空気シャワー観測装置を完成させ、計画されている地下水チェレンコフ型ミューオン検出器の設置のための準備を行う。また、昨年度に開発したMCシミュレーションによる研究を基にして、水チェレンコフ型ミューオン検出器の具体的な設計を完成させ建設に着手する。研究実地計画は以下の通りである。 (1) 信号を処理するためのフロントエンドモジュールを生産し、データ収集に必要なエレクトロニクス等の動作の確認を行う (2) 昨年度から引き続き、水チェレンコフ型・地下ミューオン検出器の基本設計を行う。その基本設計を基に、構造強度計算も含めた詳細な設計図を、ボリビア国内の設計会社にて依頼し完成させる。(3) 水槽に封入される水の確保のため、実験場所近隣で井戸の調査・建設をサン・アンドレス大学と共同で行う。その際、水質や確保可能な流量の調査も行う。(4) 引き続き、MCシミュレーションにより検出器の最適化を行い、できる限り設計に反映させる。検出器シミュレーションを最適化・評価し、 装置の設計を決定する。評価する性能としては、ガンマ線源に対するフラックス感度、角度分解能やエネルギーの分解能などである。 長期間現地に渡航できない事情が発生した場合は、ボリビア/メキシコ/中国の協力研究者が装置の較正や修理を担当する。日本側は、そのための手順書を作成し、現地の研究者と密に連絡をとりながらリモートによる運営体制を整える。
|
Research Products
(15 results)