2020 Fiscal Year Annual Research Report
Positronium generation, condensation, and cooling to realize Bose-Einstein condensation of antimatter system
Project/Area Number |
19H01923
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00647670)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 永康 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (00391889)
満汐 孝治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (10710840)
伊藤 賢志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (90371020)
渡邉 亮太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50736832)
甲斐 健師 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (70403037)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 反物質の低温量子多体物質相 / ボース・アインシュタイン凝縮 (BEC) / ポジトロニウムのレーザー冷却 / ポジトロニウム生成・濃縮・冷却ナノ反応器 / 高密度陽電子バンチ / 陽電子蓄積装置 / 陽電子輝度増強システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、素粒子物理学・原子物理学・光科学の各分野にパラダイムシフトをもたらすべく、反物質系ボース・アインシュタイン凝縮 (BEC) を実現させ、物質優勢の宇宙の謎を解くかぎとなる反物質重力測定による物質・反物質対称性の検証やポジトロニウム(Ps)原子のエネルギー準位超精密測定による束縛系量子電磁力学の精密検証、さらにはガンマ線レーザーに応用することである。本年度は以下のように、Ps-BEC実現に向けた材料開発、高密度陽電子生成技術開発、およびPsレーザー冷却光学系開発において大きな進展があった。 A) Ps-BEC実現に向けた材料開発:2020年度より新たに開始した無機酸化物の組成およびナノ集合構造を自在に制御する技術を活用した手法による材料開発ついて、2021年度以降の製作に向けた準備を完了した。さらに陽電子減速過程シミュレーション法の開発も新たに開始し、水中における電子・陽電子線コードの高度化を実施するとともに、断面積をシリコンやシンチレータへ拡張する研究を行った。 B) 高密度陽電子生成技術開発:陽電子輝度増強システムに用いる磁気集束レンズについて、試作レンズを用いたKEKでのビームテスト結果を解析し、シミュレーション手法を確立するとともに今後のレンズ開発方針を明確にした。 C) Psレーザー冷却光学系開発:2019年度に判明したシリカエアロゲル中での2P状態Psの消滅を回避し、シリカエアロゲルから真空中に放出されたPsを用いて真空中でPsレーザー冷却の原理実証実験を行うべく、準備を進めた。冷却レーザーをKEKに設置し、レーザー・Ps多重反射装置を用いて冷却実験に必要な高い効率でPsの1S-2P状態間遷移を起こすことに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ps-BEC実現のためのPs生成・濃縮・冷却「ナノ反応器」として期待されるシリカ多孔体について、新たに無機酸化物の組成およびナノ集合構造を自在に制御する技術を活用した手法による製作の準備を完了した。このようにシリカ多孔体を多様な手法によって開発し、Ps-BEC実現に最適な手法を選定する準備を着々と進めることに成功している。また陽電子減速過程シミュレーション法の開発を開始し、実際の材料に適用するための高度化を完了したことにより、今後起こりうる問題を事前に把握するとともにPs-BEC実現に最適な組成や構造を設計することが可能になり、材料開発を飛躍的に加速できると期待される。 高密度陽電子生成技術については、試作磁気集束レンズを用いた陽電子集束実験結果の詳細な解析を完了し、結果の解釈ならびに今後の設計に必要なシミュレーション手法を確立して今後の設計方針を明確にした。これにより磁気集束レンズ改良の具体的な設計が可能になり、Ps-BEC実現に必要な高密度陽電子達成に向けて大きく前進した。 Psレーザー冷却に関しては真空中におけるPsレーザー冷却の原理実証実験の準備を完了した。2021年度初頭のビームタイムでPsレーザー冷却に挑戦可能であり、成功すれば世界初の成果であるとともに、Ps-BEC実現のためのPs超高速冷却技術の確立という極めて大きな進展となる。 以上のように2020年度計画におけるすべての要素技術開発において順調な進展が見られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度までに得られた知見を基に必須要素技術である (A) Ps-BECを発現させるための「ナノ反応器」としての高度機能性シリカ多孔体、(B) 陽電子の蓄積と圧縮を実現する高密度陽電子ビーム生成システム、をそれぞれ完成させ、開発した要素技術を組み合わせて (C) Psレーザー冷却実験に取り組む。 (A) Ps-BECを発現させるための「ナノ反応器」としての高度機能性シリカ多孔体開発:これまでの研究で、シリカエアロゲル細孔中における励起状態Psの振る舞いがレーザー冷却の阻害要因となることが判明している。2021年度は、シリカエアロゲル以外のナノ細孔中における励起状態Psの振る舞いを系統的に調べ、Ps-BEC実現に最適なナノ構造・組成を探るべく、種々の無機酸化物を合成してその特性を評価する。また陽電子減速過程シミュレーション法についても、より現実的な無機酸化物材質中におけるコードを開発する。 (B) 陽電子の蓄積と圧縮を実現する高密度陽電子ビーム生成システム開発:高密度の陽電子によるパルス状ビームを生成するための陽電子蓄積装置では窒素ガス冷却式の陽電子トラップを利用する。2021年度は蓄積効率改善のためトラップ電極の改善やトラップ電位・磁場・ガス圧の最適化を行う。また陽電子ビームの密度増大のため輝度増強システムを導入して空間的に陽電子を圧縮する手法を確立する。 (C) Psレーザー冷却実験:2020年度までにPsの1S-2P状態間遷移を利用したPsドップラー拡がり測定法をほぼ確立した。2021年度はこの手法を用いて、別途開発したPs冷却用プロトタイプレーザー照射の有無によるPs温度差を測定し、Psレーザー冷却の原理を実証する。実験はKEKおよび産総研における共同利用陽電子ビームラインにて行う。
|
Research Products
(16 results)