2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H01929
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺西 高 九州大学, 理学研究院, 准教授 (10323495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保野 茂 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 客員主管研究員 (20126048)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トリプルアルファ反応 / 対崩壊 / 内部電子対生成 / ホイル状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘリウムから炭素を生成するトリプルアルファ(3α)反応は宇宙での元素合成や天体の進化において重要な役割をしている。3α反応率を決定するパラメータの一つである、炭素12の第2励起状態(ホイル状態)の放射崩壊幅は、現在のところ実験的には±9%程度の精度でしか決定されていない。この放射崩壊幅の実験決定精度を最も支配している測定量はホイル状態の対崩壊分岐比である。本研究では新考案の逆運動学α共鳴非弾性散乱法により対崩壊分岐比を従来より高精度で実験的に決定することを目指している。本年度は本測定に至る前の準備として以下の項目を九州大学タンデム加速器施設にて実施した。 (1)本測定用データ収集系の構築を行った。 (2)αビームと炭素標的を用いた順運動学非弾性散乱実験により、ホイル状態生成断面積の測定を行った。まず過去のデータを参考に、重心系70度において断面積が極大となるビームエネルギーが 13.8 MeV であることを確認した。次にこのエネルギーにおける角度分布を測定し、逆運動学条件(重心系180度)での微分断面積を外挿により見積もると、仮の結果として約 10 mb/sr の値が得られた。これは当初想定の 5 mb/sr より大きく、効率良い測定ができることを示している。 (3)GEANT4コードによるシミュレーションを行い、検出効率とバックグラウンド分離能力の観点から、対崩壊検出用プラスチックシンチレータの形状の最適化を行った。実際にプラスチックを製作し、検出器の仮組み立てを行った。 (4)逆運動学実験用ヘリウムガス標的を封じ込める膜の材質としてチタン(厚さ2μm)およびニッケル(厚さ1μm)を検討した。42 MeV の炭素12ビームをこれらの膜に実際に照射して、透過後の多重散乱によるビームの角度広がりを実測した。これにより、ヘリウムガス中のビーム広がりを見積もることが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本測定の前の準備として断面積測定とビーム多重散乱測定を行うことができた。 シミュレーションを行い検出器形状を決定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに本測定に必要な準備(検出器のテスト等)を行う。本測定とほぼ同じセットアップで、より弱いビーム強度での予備測定を行い、セットアップのチェックを行う。もし、この時点で何等の問題が生じれば検出器のデザイン等セットアップの改善を行う。セットアップの問題がなければ、ビーム強度を増強して、本測定を実施する。
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