2021 Fiscal Year Annual Research Report
山口干渉計を用いた誕生直後の大質量原始星候補の大規模探査
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19H01937
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
元木 業人 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (10722803)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 電波干渉計 / 大質量星形成 / 原始星ジェット / 赤外線暗黒星雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)探査状況: 本年度終了時点でIRDCクランプ112天体に対して8 GHz帯での探査観測を行なった。このうち30天体が20 mJy以下の微弱電波源であった。最も微弱な天体のフラックスは2 mJyであり、これは大質量原始星からの電波ジェットの典型的なフラックスと良く一致している。前年度発見された微弱電波源がより低温高密度なクランプに付随している傾向は引き続き観測されており、今年度も質量が比較的大きいにも関わらず低密度な天体では検出率が下がる傾向が見られた。 (2)成果発表: 日本天文学会2021年度秋季年会などにおいて、「山口干渉計による赤外線暗黒星雲に埋もれた原始星アウトフロー天体の探査観測」の題目で大学院生による成果発表をおこなった。 (3)多周波フォローアップ: 8 GHz帯で検出された電波源に対し、6 GHz帯でのフォローアップ観測を行い9天体で2周波でのフラックス測定に成功した。これらを用いて試験的にスペクトル指数を導出したところ、5天体は誤差の範囲で原始星ジェットで予想される正の値に一致する可能性が示された。しかし観測精度の問題から測定誤差が大きく、1天体を除き放射機構と母天体を特定するには至らなかった。一方で本年度の試験結果から較正手法の問題点が明らかになったため、次年度以降は観測手法の向上を図ることで精度良くスペクトル指数の決定ができる見込みとなった。 (4)多波長データベースによる母天体の調査: 赤外線およびサブミリ波データベースの画像を用いて、電波源が観測された赤外線暗黒星雲の物理環境調査を行った。その結果一部の天体はサブミリ波連続波の放射サイズが70ミクロンでの赤外線で暗い半径よりも大きいことがわかった。これは近傍に赤外線源が存在していることを意味しており、すでにクランプ内で星団形成が始まっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は32m望遠鏡の受信機および駆動系のトラブルにより、観測停止期間が半年以上に及んだため、観測予定が大幅に遅延した。また常温観測で感度が低下していたことから、新規探査の推進ではなく2周波準同時観測によるスペクトル指数の測定など試験観測を優先して行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度発生したトラブルは原因特定および対応が完了したことから、2022年度は予定通り観測可能な見込みである。またデータ記録系が更新されたことで観測効率は向上しており、まずは8 GHz帯での探査の完了を優先して遅れを取り戻す予定である。また研究に関わる大学院生の数が増えたことから、データベースによる母天体研究や多波長によるフォローアップ観測も並行して推進できると期待される。
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