2022 Fiscal Year Annual Research Report
山口干渉計を用いた誕生直後の大質量原始星候補の大規模探査
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19H01937
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
元木 業人 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (10722803)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 電波干渉計 / 大質量星形成 / 原始星ジェット / 赤外線暗黒星雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)探査の状況: 本年度終了時点で167個のIRDCクランプに対してYIによる8 GHzでの探査観測を行った。このうち37天体が20 mJy以下の微弱電波源であり、若い大質量原始星からのジェットの候補であると考えられる。 (2)検出天体の性質: 検出された微弱電波源のうち、分子輝線や星間メーザーアーカイブデータなどが存在する22天体について周辺環境を分析した結果、(A) YIによって検出された電波源以外星形成の兆候がないもの、(B) 微弱電波源にアウトフローまたはメーザーが付随しているもの、(C) 母体クランプの周辺にも星形成の兆候があるもの、の3種類に分類された。このことは星無しとして分類されてきた70ミクロンの赤外線で暗いクランプの段階で、既に星団形成としての進化段階に違いがあることを示唆している。特に面密度が高いクランプは星形成の兆候が付随しやすい傾向が見られた。一方でKauffmann & Pillai (2010)で報告されたある半径のクランプに対して大質量星形成が可能な質量の経験的な閾値と比較したところ、微弱電波源のうち29天体が閾値以上、5天体が閾値付近であることが判明した。このことから星形成の兆候がないクランプの大半がより若い進化段階にあることが示唆された。 (3) 成果発表: 以上の研究成果、今後の観測計画についてVLBI懇談会シンポジウム等の国内研究会において口頭発表3件、ポスター発表1件の発表を行った。また鹿児島にて開催された国際シンポジウムIAU380においてポスター発表を行った。さらに茨城大学主催の大質量星形成過程における強度変動研究会において、本研究の発展としてYIにを用いて電波ジェットの強度変動をモニターすることで、メーザーが付随しない若い原始星に対して降着バーストに伴う光度変動現象を探査する計画を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
32m望遠鏡の冷却受信機の不具合による感度低下のため一定期間YIの観測が停止したことで探査の予定が遅延した。これについてはメンテナンスの結果性能が実装当時のレベルに近いところまで改善したため、今後は観測ペースが向上することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 優先ターゲットに対する探査の完了: 望遠鏡トラブルによる観測の遅延に基づき、初期観測のターゲット数を観測条件が良い250天体程度に絞って8 GHzでの探査を完了させる。 (2) SED測定による天体種別の調査: 微弱電波源に対して6 GHzでフォローアップ観測を行いSED測定を行うことで放射機構を特定し、母天体を明らかにする。 (3) モニター観測を行い時間変動の調査: モニター観測を行うことで降着率変動に伴う光度変動の有無を調査する。 (4) 分子輝線による追観測: 茨城大学が運用する高萩望遠鏡を用いたNH3輝線観測を実施し、母体クランプの温度や密度、化学進化の違いを検証する。
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