2019 Fiscal Year Annual Research Report
新しいHα輝線天体検出方法による銀河面リッジX線放射を構成する点源天体の研究
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19H01939
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永山 貴宏 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (00533275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森鼻 久美子 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (50640843)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 輝線星 / サーベイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は水素原子のHα輝線を放射する星(輝線星)を効率よく発見するための新しいカメラを製作し、そのカメラを用いて輝線星のサーベイ観測を行うことを目的としており、2019年度はこのカメラの基本部品の検討・設計・製作を行った。 このカメラで最も重要な部品が45度の斜入射でHα輝線(656.3nm)を透過し、その近傍の連続線を反射して切り分ける狭帯域フィルタである。研究開始前から斜入射であることにより、切り分けが難しいことが予想されており、このフィルタの製作が本研究の最大の課題であった。光学薄膜メーカーのシミュレーションによれば、本カメラに適した入射角度(45度)、入射ビーム(F8)では、λ<610nm、および、λ>695nmで入射角度によらず良い反射特性が得られることが分かった。一方、観測天文学の観点から既知の輝線天体のスペクトルを文献で調べ、λ~600nm、および、λ~700nm付近には目立った輝線・吸収線がないことが分かった。そのため、Hα輝線と対とする両脇の波長の中心波長を、λ=605nm、λ=705nmと定め、45度入射でHα輝線付近のみ透過し、λ<610nmおよび、λ>695nmを反射する狭帯域フィルタを製作した。メーカーの出荷時の検査では仕様を満たしており、我々自身による測定はまだ行われていないものの、本カメラの実現に目途が立った。 並行して、この狭帯域フィルタ、および、F値の変換と光学収差の補正を行うレンズ、CCDカメラを設置する部品の設計と試作を行った。また、使用するCCD検出素子を駆動するためのデジタル回路の設計・製作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の目標は、Hα輝線とそれ以外の波長を切り分ける45度入射の狭帯域フィルタを製作することであった。製作自体は完了できたが、測定は完了していない。 カメラ光学系を配置・収納する部品も設計と試作までできている。 以上により、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、昨年度作成した45度入射Hα狭帯域フィルタの透過・反射特性を測定・評価する。また、F変換・視野補正レンズなどを段階的に組み合わせていき、光学調整と結像性能の評価を行い、設計通りの結像性能が得られるようにする。 また、検出素子として用いるCCD(KAF-1001)を駆動する小型回路、および、ペルチェを用いた小型真空冷却容器を製作し、KAF-1001の動作試験を行う。あわせて、露出時間を制御する機械式シャッターの製作も行う 光学系、および、CCDカメラを組み合わせて、総合的な試験を行い、年度の後半に鹿児島大学1m望遠鏡に取り付け、試験観測を行う。試験観測では、望遠鏡に取り付けた状態でのCCDの冷却温度(暗電流)、読み出しノイズ、Hα波長、および連続線波長での結像性能、限界等級を評価する。 既知の輝線星が含まれる視野の観測を行い、Hα輝線波長、および連続線波長での明るさの比較から、その輝線星が正しく輝線星として選出されるか、また選出できるようにするためにはどのような観測・解析手法が必要かを研究し、最終的には輝線線として検出可能なHα輝線の等価幅を決定し、何がその値を制限しているかを調べる。 これらの情報をもとに次年度以降の輝線星サーベイの計画を練る。
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