2019 Fiscal Year Annual Research Report
惑星観測用補償光学系の波面センサの広視野化と高速化
Project/Area Number |
19H01941
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
渡邉 誠 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (10450181)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 補償光学 / 波面センサ / 惑星観測 / 光赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現在の惑星観測用多層共役大気ゆらぎ補償光学装置の補正性能を向上させるため、この装置の4個の波面センサを単一の広視野高速波面センサへ置き換える形で開発を進めている。 2019年度は広視野波面センサの仕様(小開口数、ピクセルスケールなど)を決定するため、波面センサの小開口の数(素子数)をこれまでと同じく11x11素子もしくはそれ以上で、その1素子(1小開口)ごとの視野を約55秒角(50秒角+マージン)とすることとして、モンテカルロ法による惑星観測用多層共役補償光学装置の大気ゆらぎ補正の計算機シミュレーションを行い、補正性能を見積もった。その結果、波面センサのピクセルスケールを約0.6秒角/ピクセルとすることとした。このとき波面センサのカメラに必要な画素数は1000x1000ピクセル程度となるため、その画素数を低ノイズ(10e- RMS程度以下)で高速(>約500Hz)に読み出し可能なカメラとして、浜松ホトニクス社のsCMOSカメラC14120-20Pを選定し購入した。 また、波面センサのデータ取得フレームレートを高くするとフレーム当たりの光量が減って信号対ノイズ比が下がり波面測定精度を損なってしまう。そこで、現在の惑星観測用補償光学装置の軸外し放物面鏡8枚をより高反射率(かつ低散乱損失)のものへ交換することで、光学系の透過効率を向上させ、光量低下を避ける。これら8枚はいずれも反射コートが保護膜付きアルミ(反射率92%)であるため、保護膜付き銀コート(反射率98%)へ変更することで透過効率を向上させることができる。また8枚のうちの6枚は金属鏡で表面粗さによる散乱損失(約12%ロス)も大きい。2019年度は、この6枚の交換用となる、表面粗さ精度の高いガラス鏡で保護膜付き銀を反射膜とした軸外し放物面鏡を製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、当初計画通り、1) 計算機シミュレーションによる惑星観測用多層共役補償光学装置の性能見積もり、2) 広視野波面センサの設計に関して、波面センサの主な設計パラメータの決定と波面センサ用カメラの調達、3) 装置の軸外し放物面鏡の交換に関して、軸外し放物面鏡の製作をいずれもおおむね遂行できた。ただし、軸外し放物面鏡の製作は、当初計画していた8枚のうちの大型の2枚の鏡について、鏡の製作費用が当初想定より相当に高額であることが判明したため、断念した。この2枚には表面粗さによる散乱損失の問題は元々なく銀コートへの変更による反射率の向上のみを想定していたため、この2枚を交換しないことによる、性能向上への影響は限定的である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は広視野波面センサの光学系およびレンズマウントなど光学機械系の設計と製作を行う。選定したカメラの諸元(センササイズやピクセルサイズ、レンズ取付機械部の形状やサイズなど)に合わせてコリメーターレンズ・マイクロレンズアレイ等の光学設計と光学素子およびカメラのマウントの機械設計を行う。また製作した新しい軸外し放物面鏡のマウントの機械設計と製作を行う。
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