2019 Fiscal Year Annual Research Report
A statistical test of the missing satellite problem in the CDM model
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19H01942
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
田中 賢幸 国立天文台, ハワイ観測所, 准教授 (50589207)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近傍銀河 / 観測的宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はすばるHyper Suprime-Cam (HSC)を用いて近傍銀河を観測し、銀河の周りの矮小銀河を正確に数えることで、現在広く支持されている宇宙論モデルを銀河スケールで検証しようという試みである。19年度は実際にすばる望遠鏡で取得した膨大なデータを整理し、まず一時処理を行った。これによりそれぞれの画像の品質をチェックし、質の悪い画像を除去し、サイエンス解析に使えるデータのみを厳選することができた。その後、画像解析の大事なステップである、背景光の差し引きで試行錯誤を行った。矮小銀河は淡く広がった銀河であることから、画像から背景光を引くときに矮小銀河まで引かないように、注意する必要がある。十分大きなメッシュサイズで背景光を推定し除去することで、矮小銀河そのものが影響を受けないことを確認し、画像処理を最後まで進めた。その結果、高いクオリティで銀河の周囲を広くカバーする画像が、16個の銀河に対して作成できた。これが本研究の基礎になる画像データとなる。
この画像から矮小銀河を検出し、その明るさや位置を測定することが次のステップである。数十万という天体がそれぞれの画像に写っており、そこから20,30個ほどの淡く広がった天体を抽出する部分が、本研究の最も難しいところである。ここは技術開発が必要な部分で、本来の予定では研究員を雇用した開発を予定していたが、実際には十分な技術力を持った研究員を雇用することができず、本研究が遅れる原因となってしまった。その後、数ヶ月遅れではあるが雇用することができ、この開発を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」で記したように、19年度では計画通りに画像処理を完了した。これは研究開始までにすばる望遠鏡に観測提案をし、大部分を取得済みだったデータで、丁寧なデータスクリーニングと解析パイプラインのチューニングにより、本研究の基礎となる画像データを準備することができた。それぞれの銀河で30-60分程度の露出ではあるが、すばる望遠鏡の集光力を活かし、暗い銀河まで検出できる画像となっている。この画像の深さは本研究の極めて大事なところで、淡く広がった矮小銀河を検出するためには、必要不可欠な要素である。
数ヶ月の遅れはあったものの、研究員も雇用することができ、研究の一番難しい部分である矮小銀河の検出に着手をしている。天体検出ソフトウェアを走らせ、数十万という天体からごく少数の矮小銀河を効率よく探すことは大きなチャレンジであり、様々な手法を試している最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は雇用した研究員とともに、矮小銀河の自動検出アルゴリズム開発に集中することになる。ここを乗り越えないと、サイエンスとしての結果が出てこないので、本研究の一番大事な部分である。検出には複数の手法を試す予定でいて、天体を自動かつ高速で検出するソフトウェアや、検出した天体を丁寧に測定するソフトウェア、または目視によるチェックまで考えている。それぞれ一長一短あり、100%全てを検出できなくとも、統計的に数を推測できるような統計手法も考える必要があるかもしれない。いずれにせよ、矮小銀河は淡く広がっていて、その低い面輝度が一番の特徴である。基本姿勢としては低面輝度の銀河を選ぶことを第一としつつ、背景銀河や、画像のゴミなどを効率よく除去する手法を開発していきたい。多くの試行錯誤が必要なところで、短期間での課題解決は難しい可能性もある。しかし、粘り強く開発を続け、結果までの道筋をつけたい。
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