2020 Fiscal Year Annual Research Report
衛星ー航空機ー気球ー地上連携観測による中緯度帯における夜光雲発生メカニズムの解明
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19H01956
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
鈴木 秀彦 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40582002)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂野井 和代 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (40292198)
穂積 裕太 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 特別研究員 (50803889)
坂口 歌織 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 主任研究員 (60598994)
高田 拓 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (80455469)
津田 卓雄 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90444421)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 夜光雲 / 超高層大気 / 中間圏 / 地球温暖化 / リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は3か年で遂行する。2年目は初年度に開発作業を完了した既存カメラシステムのアップデートし、新しい地上カメラシステムによる夜光雲観測を開始すると共に、小型係留気球システムを用いた北海道における夜光雲観測に注力する計画であった。しかし、コロナ禍による出張制限により、当初計画していた北海道への遠征を要する観測計画はすべて中止となったため、本年度は気球システムの安定化機構の改良および姿勢制御精度の評価手法の開発、低出力通信モジュールの改良、係留索巻き上げ機構の改良など、気球観測の精度および成功確率を向上させるための開発研究に注力する方針に転換した。航空機観測についてもコロナ禍による国際線の大幅減便により、観測計画そのものが実施不可能になったため、初年度に得られた試験観測の結果を慎重に解析した。その結果、航空機による観測が既存の衛星に比べて有意に中緯度夜光雲の補足率を向上させることを示す事が出来たため、当該成果については本年度末から翌年度頭に査読付き国際ジャーナルへ投稿論文としてまとめ、現在投稿中である。衛星観測による成果については、静止気象衛星ひまわりデータによる1,夜光雲の自動検出アルゴリズムの開発およびその有効性の検証、2,夜光雲画像の追跡による極域上部中間圏風速変動の導出手法の開発および初期結果の報告、3,マルチバンド観測による夜光雲構成粒子の粒径分布の導出手法の開発などのトピックで国内学会で計4件の報告を実施したのち、現在2本の投稿論文を査読付き国際ジャーナルへそれぞれ投稿準備および投稿中である。地上観測では自動観測カメラが2020年の夏に起こった国内での夜光雲の大出現イベントを捉えることに成功した。本件については代表者の所属でのプレスリリースを行った後、新聞他多くのメディアで紹介された他、その成因について考察した結果を国際ジャーナルへ投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた北海道における小型気球による中緯度夜光雲観測がコロナ禍により中止せざるを得なかったことによる観測計画の縮小は深刻であるが、小型係留気球による大気観測手法の開発では、試験観測や気象条件解析により多くの知見を得ることができた。また、航空機観測もコロナ禍により中止になったものの、2020年の夏には国内2例目となる夜光雲の大出現を北海道に展開する地上カメラネットワークにより捉えることに成功した。また、衛星観測データによる夜光雲の監視手法においても、夜光雲発生を準リアルタイムでSNSを用いて一般に知らせるシステムの開発運用に成功するなど一定の発展があった。これらのことから、現時点で異なるプラットフォームからの連携観測により中緯度夜光雲の発生頻度を正しく捉えるという本プロジェクトの目標を一定程度達成できていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍による遠征を伴う観測計画の中止は痛手であった。特に北海道で予定していた小型気球による夜光撮像計画が中止になったことにより、小型気球による夜光雲の補足に至っていない点が、本プロジェクトが残す重要な未到達ポイントである。最終年度では、この小型気球による夜光雲観測を成功させ、少なくとも小型係留観測が夜光雲の連続監視に有用な手法であることを示すことを目指す。夜光雲の出現時期は北半球においては6-7月頃であるから、この時期に北海道での遠征観測を実現することが望ましいが、本報告書を記述している時点でその実施可否は不透明である。しかし、最終年度については夜光雲シーズンを外しても、状況が許せば北海道での気球試験は実施する計画である。また、改良した夜光雲の地上観測システムを当初計画では予定していなかった南極域に展開する計画も実現可能性について検討中である。
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Remarks |
いずれも研究者所属機関によるプレスリリース。
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Research Products
(11 results)