2020 Fiscal Year Annual Research Report
最先端の地上大気観測とデータ同化で、線状降水帯の予測精度はどこまで向上するのか?
Project/Area Number |
19H01983
|
Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
吉田 智 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 主任研究官 (00571564)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 哲 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 主任研究官 (00377988)
柴田 泰邦 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (10305419)
永井 智広 気象庁気象研究所, 台風・災害気象研究部, 研究官 (30343891)
瀬古 弘 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 部長 (60354445)
山本 真之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所リモートセンシング研究室, 主任研究員 (90346073)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 線状降水帯 / 豪雨予測 / ライダー / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々研究者グループでは適応信号処理等の最先端工学技術を駆使した地上大気観測器を開発してきた。即ち、水蒸気量鉛直プロファイルを得る「水蒸気ライダ」 、気温の鉛直プロファイルを得る「気温ライダ」、風の鉛直プロファイルを得る「ウィンドプロファイラ」である。ライダ、ウィンドプロファイラは共にリモートセンシング機器で、レーザ光又は電磁波を大気中に照射し、その後方散乱から物理量(水蒸気量、気温、3次元風向風速)を得る。これらの最先端観測器の観測データをデータ同化することにより、線状降水帯に伴う降水量の予測精度向上を目指す。 研究2年目の令和2年度では、これらの上記の最先端大気観測器を用いて、東京都で.水蒸気量・気温・風の鉛直プロファイルの連続同期観測、長崎県で水蒸気・風の観測を実施した。令和2年度の観測では、長崎県で発生した線状降水帯についてその風上側で水蒸気および風の観測に成功した。これまでモデルの結果で予想されていた通り、非常に湿潤な大気が大気下層に流入していることを観測により示した。さらに、水蒸気データを同化することにより、風下側で発生した線状降水帯に伴う豪雨の予測精度を向上することを確認した。 関東の観測では風下側で大雨が発生しなかったため、豪雨のデータ同化実験は実施していない。茨城県では次世代の水蒸気観測ライダとして注目される水蒸気DIALの観測を実施し、既存の水蒸気ライダとの比較観測を行い、データ同化に必要な観測データの基本的な特性を把握した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
長崎での水蒸気ライダによる水蒸気の鉛直分布観測およびドップラーライダによる風の観測を6月下旬から開始し、線状降水帯の上流側の水蒸気及び風の観測に成功した。線状降水帯の発生前から発生後までの詳細な水蒸気鉛直プロファイルの連続観測に成功したことは、我々の知る限り初めての事例である。さらに水蒸気鉛直プロファイルのデータ同化実験を実施し、線状降水帯に伴う豪雨の予測精度向上に効果的であることを確認した。研究2年目でこの成果を得られたのは予想していた以上の進捗である。 一方、東京都内での観測は新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響を大きく受けた。即ち、観測サイトへのアクセスが制限されたため、観測は予定通りには進んでいない。しかしながら限られた観測データを用いて、基礎的な解析を経て観測器の観測誤差など基本的な情報を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大状況を踏まえながら、長崎および関東の観測を実施する。さらに線状降水帯の事例が発生した場合において、昨年度同様にデータ同化実験を実施し観測がどの程度豪雨予測精度向上に貢献するのか、明らかにしていく。今年度、さらに線状降水帯の事例数を増やすことができれば、申請時の予定にはないが統計的な解析も進めていく。観測を進める一方で、観測データを増やし、解析可能な事例を増やすために、空港ドップラーライダーデータや民間の観測データの利活用について検討を進める。
|