2021 Fiscal Year Annual Research Report
超高温・高圧条件における地球深部物質の体積熱容量計測技術の開発
Project/Area Number |
19H01995
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
八木 貴志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (10415755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 健二 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20727218)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高圧 / 高温 / 体積熱容量 / 熱伝導率 / マントル / コア |
Outline of Annual Research Achievements |
地球核およびマントル物質の体積熱容量を温度軸と圧力軸の両面から依存性を明らかにすることを目的に、高温・高圧条件における体積熱容量の計測技術の開発と、地球深部物質の熱物性計測を進めた。高温加熱用レーザの1台の修理が完了し、従来よりもさらに高温環境の実現が可能となった。マントル鉱物の熱伝導率の評価として、MgOペリクレース相の評価を行い、12 GPaにおいて最高3169 Kにおける計測に成功した。また最高圧力140 GPaにおいては約2000 Kでの熱伝導率を計測した。この結果からMgOペリクレースの熱伝導率の密度および温度微分係数を決定しそれぞれ4.4および-0.62の結果を得た。また高温高圧熱伝導率計測において、レーザ吸収体や圧力計測用に用いられるPtの高温高圧熱伝導率についても評価を行い、κ(W/m/K)= 0.953P/GPa+0.0137T/K+61.8 <~1850 K, 125 GPa>の関係式を得た。通常の固体物質は温度増加によりフォノン散乱が増加することから熱伝導率は負の温度依存性を持つが、Ptの熱伝導率は、常温で正の温度依存性を有することが知られている。今回の結果により、高圧ではこの正の温度依存性がより顕著になることが初めて明らかとなった。またピコ秒レーザ弾性波測定による水素化鉄の100 GPaまでの音速計測結果から地球内核条件(360 GPa、5500 K)における弾性波の予想値を算出できた。体積熱容量計測についても開発を進め、基礎的な測定条件におけるデータ解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続きコロナ感染の影響を受けて、リサーチアシスタントの実験の制限が多い中ではあるが、従来よりもはるかに高い温度条件(3000 K)におけるマントル物質の熱伝導率計測に成功するなど、一定の成果を挙げることができた。またリサーチアシスタントが熱伝導シミュレーションの操作に習熟することにより、加熱時のダイヤモンドアンビル内の温度予測の精度が向上した。体積熱容量計測の光学ラインを現在の熱伝導率計測の光学ラインと切り替えて使用ができるように改造を進めるなど開発についても進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
体積熱容量計測の温度軸に対する計測を成功させるとともに、NaCl、サファイアなどの圧力媒体、MgOやMgSiO3などのマントル鉱物、Feなどのコア物質に対する計測を進める。熱伝導計測においては、コア条件の高圧・高温条件に挑戦し、これまで未踏であった極限条件における熱物性データの提供を拡充していく。現在使用しているダイヤモンドアンビルの先端径は120μmであるが、より高圧を実現するために先端径90μmの使用を進めていく。
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