2019 Fiscal Year Annual Research Report
地球気候の本質的理解に向けた温室地球時代の海水温季節変動動態の解析
Project/Area Number |
19H02016
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
守屋 和佳 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (60447662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 卓 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (50272943)
山本 正伸 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (60332475)
石村 豊穂 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (80422012)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古環境学 / 温室地球時代 / 古海水温 / 海水温季節変動幅 / 海洋無酸素事変 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,地球温暖化時代の極相期の一つである白亜紀中期セノマニアン期からチューロニアン期(CTB;約9千4百万年前)に生じた海洋無酸素事変を対象として,平均古水温の緯度勾配と,古水温の季節変動幅との時系列変動を明らかにする.平均古海水温の算出に加え,海水温の季節変動幅の算出から,炭素循環擾乱イベントに対する海水温の動的応答の解析を行うことで,温室時代の気候フィードバックがどのような順序で,どのような時間スケールで生じたのかを明らかにする. 本年度は,イオン交換水流下で,開孔径63マイクロメートルのふるいを用いて堆積物試料を洗浄し,浮遊性有孔虫を含む微化石を抽出する作業を中心に行った.予察的研究から,CTBのおおまかな層位学的位置は明らかになっていることから,その層準を含む範囲の堆積物を洗浄した.双眼実体顕微鏡を用いて,洗浄後の残さから浮遊性有孔虫化石を抽出した結果,極めて保存状態の良い多様な浮遊性有孔虫化石が多産した.これらの化石について走査型実体顕微鏡を用いて殻の保存度や,殻内に沈殿した二次的な方解石の有無を確認した.その結果,これらの化石は初生的な殻体を保持していることが明らかになった. また,全岩の有機炭素同位体比測定を行うために,堆積物試料の乾燥と粉末化および脱灰を行った.これらの試料について,窒素および有機炭素含有量の測定を行った上で,有機炭素同位体比の測定を行った.これにより,予察的な研究で明らかになっていたCTBの層位学的位置をより詳細に明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度は,以下の6つの項目を進めることを予定していた.1)実体顕微鏡での有孔虫化石の拾い出し,2)走査型電子顕微鏡家での浮遊性有孔虫化石の保存度確認,3)安定同位体比質量分析計isoprime precisIONによる浮遊性有孔虫20から30個体の酸素同位体比分析,4)全岩堆積物から有機分子の抽出,5)堆積物の酸処理による脱灰,6)元素分析計による有機炭素含有量の測定.このうち,概ね終了した項目が,1,2,5,および6である.予察的段階まで終了した項目が3および4である.3については,試料の準備は整ったが,平成31年9月に早稲田大学に納入された安定同位体比質量分析計isoprime precisIONの分析精度および確度にやや問題があり,検討を行った結果,分析経路の一部に問題があることがわかった.既に分析を済ませた試料についても,再度その値の正当性を確認するために今後再分析を行う予定である.安定同位体比質量分析計においては,想定の範囲内程度の問題であり,これについてはすでに問題の原因が特定されているので,今後,改善し分析を継続する.4については,一部の試料については処理が終了したが,未処理の試料も残されていることから,これについては今後分析を進める予定である.また,年度末に予定していた研究集会については,新型コロナウィルス感染症蔓延の影響を考慮し,令和2年度以降に実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,分析機器の一部の問題があったが,これは想定の範囲内の事象であり,概ね計画通りに研究が進行した.この程度の支障であれば,令和2年度内に十分吸収可能と思われる.また,若干の支障があった内容は,研究計画立案時点から,令和2年度も継続して実施予定であることから,令和2年度以降は,研究計画のとおり,1)isoprime precisIONによる浮遊性有孔虫化石20から30個体の酸素同位体比分析,2)有機分子の抽出,3)元素分析系による有機炭素含有量の測定を前年度から引き続き行う.また,新規事項として,4)高速液体クロマトグラフィーによる有機分子化石組成の解析,5)極微量炭酸塩同位体比分析システムによる有孔虫1個体ごとの酸素同位体比分析,6)有機炭素同位体比分析を新規に開始することとする.
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Research Products
(8 results)