2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on chemical evolution by simulation experiments regarding the plasma processes and hydrothermal conditions with minerals under the Hadean Earth environments
Project/Area Number |
19H02017
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
川村 邦男 広島修道大学, 人間環境学部, 教授 (50204772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 満 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 准教授 (40363519)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生命の起源 / プラズマ / 熱水反応 / RNA / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は,A:多段化学進化装置 (Multi-HF)の開発,B:アミノ酸原料からタンパク質までの化学進化の解析,C:塩基・糖・リン供給源からRNAまでの化学進化の解析,D:原始タンパク質と原始RNAの機能解析,E:計算化学による評価,の5 項目からなり,平成31年度は川村(代表者)および佐々木満准教授(分担者)が項目A~Cを行う予定であった。 項目A:Multi-HFを設計し鉱物フローリアクター部分については完成している。プラズマ発生源として,超音波およびナノパルス放電を検討するが,超音波については200KHzを第1条件として設定することとした。しかしこの装置の製作に必要な物品調達に時間を要したため,Multi-HFは製作途中である。一方,研究分担者によるナノパルス放電プラズマ装置は納品が完了し,装置特性の確認などを終了した。 項目B:研究分担者の熊本大学において新規購入したナノパルス電源を用いて,プラズマ照射下におけるペプチド生成反応を調べた。この新装置は従来用いていたものと異なるため,装置特性を調べた。おおむね類似のペプチド生成反応が進むが,装置特性による反応に対する違いがあるため,新装置ではペプチド生成に対するpHの効果の検証から開始した。また新装置ではパルス周波数を広い範囲で調節できる特性を生かして実験をすすめるという方針を決定した。 項目C:研究協力者のM.-C. Maurel教授およびJ.-F. Lambert教授(ソルボンヌ大学)らと,リボースと核酸塩基からヌクレオシド・ヌクレオチドが生成する過程について,現地の大学院生とともに検討を進めることとし,実験を進めている。 項目D:予定とは前後するが,項目Aについて物品の納品が遅れたため,本年度は高温条件に加えて高圧条件を設定できる装置を用いてリボザイムの反応特性を調べ,所定の圧力下でのリボザイムの反応特性を測定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
項目Aについては,装置納品が遅れたため,当初の予定であったMulti-HFの製作が遅れている。一方でナノパルス放電プラズマ装置については,順調に進んでいる。Multi-HFについては,基本原理は確立しているものの,装置を作成して作動状況を調べること,プラズマ発生状況を早急に調べなければならない。以上の点で予定よりも遅く進んでいると評価した。 項目Bについては,アミノ酸あるいは短いペプチドを原料とするペプチド伸長反応の検討を開始し,ペプチド生成に関する情報が得られ,ほぼ予定通りと評価できる。 項目Cについては,項目AのMulti-HFが完成していないのでMulit-HFによる化学進化過程の解析は進んでいない。一方で,研究協力者であるM.-C. Maurel教授らと鉱物触媒による反応の解析を進めている。これは,Multi-HFの基盤となる研究であり順調に進んでいる。 項目Dについては,RNA予定の順番とは異なるが,機能性RNAの原始環境下での機能解析を一部行うことができた。このためMulti-HFによる効果の土台となるデータを得ることができ,この項目については部分的に順調であると言うこともできる。 以上の全体を自己評価すると,すすでいるところもあるが,プラズマ装置の製作が本課題の土台であることを考慮すると,やや遅れていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,項目Aの半分の課題であるMulti-HFを早急に確立する。 項目A:これを用いて,超音波プラズマによる種々の原始環境を連続的に調べることができる装置を用いて,ペプチドおよびRNAの生成過程に関わる反応を追跡する。どの過程をターゲットとするかについては,研究分担者および研究協力者を議論しつつ進める。 項目B:アミノ酸からのペプチド生成については,これまでに予備研究が進んでおり,その成果を公表する。同時に,現在行っているpHの影響を今年度は重点的に解析する。 項目C:ソルボンヌ大学におけるデータを情報共有しつつ,Multi-HFによる実験成果をフィードバックする予定である。 項目D:現在までにリボザイム反応の圧力依存性について,一部のデータを得ることに成功した。追加のデータを得たのちに,これまでの成果を公表する方向で進める。
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