2019 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of the Nucleation Principle Underlying the Size Distribution Law of Bubble Nuclei Always Present in Water
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19H02068
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 伸一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (00466244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 聡 九州大学, 工学研究院, 教授 (50304738)
片山 雄介 九州大学, 工学研究院, 助教 (20778815)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水 / 気泡核 / ナノバブル / 安定性 / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,水中で発生する多くの気泡生成現象において,その起点となると考えられている気泡核(100マイクロメートル程度以下の微小な気泡)の形成原理を,確かな実験によるサポートのもと,理論的および数値的に解き明かすことである.水中の気泡核数(気泡核の数密度)のサイズ分布は,気泡核の半径Rに対して明確な指数則を示すことが知られているが,本研究では特にこの指数則に潜むと考えられる気泡核の形成原理を,主に微視的な視点から解明することを目指している. 以上の目的および趣旨のもと,研究初年度となる令和元年度は,不純物の混入がまったく無い純水中において,分子の熱運動によって生じる熱ゆらぎ,および隣接する気泡核どうしの力学的な干渉が,分子数個~20個分程度の直径の気泡核(ナノバブル)の安定性に及ぼす影響を分子動力学(Molecular Dynamics(MD))シミュレーションにより検討した.その結果,熱ゆらぎがもたらすランダム性により,隣接する気泡核のサイズに必ず非一様性が現れることで,気泡核の熱力学的な安定性が決定的に低下することを明らかにした.これは,隣接する気泡核どうしの干渉がナノバブルの熱力学的安定性を向上させるという最新の研究報告(Hong et al., Fluid Phase Equilibria, 2019)に対して,真逆の知見を提示したものである.この研究成果は,不凝縮ガスをはじめとする水中不純物が,熱ゆらぎを伴う微視的なスケールの気泡核の安定性に対して決定的な役割を果たすことを明示するものであり,気泡核の数密度分布が指数則に従うという性質を今後解き明かすうえで重要な背景基盤をもたらす成果として位置づけられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノスケールの気泡核(ナノバブル)の存在原理に関わる物理因子について,今後の解析に必要な知見が確実に得られてきているため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は代表的な不純物である①不凝縮ガス(空気),②電解質や界面活性剤,が気泡核の安定性ひいてはサイズ変化に及ぼす影響を,これまでと同様に熱ゆらぎや気泡核間の干渉に注目し,MDシミュレーションにより検討する.また,①や②が各気泡核のサイズ変化に及ぼす影響を単純な数理モデルとして表現するところまでを令和2年度中に行い,令和3年度に実施予定である気泡核のサイズ分布の時間発展方程式(非平衡統計力学モデル)を用いた数理解析の準備を進める. また,以上のMDシミュレーションに基づいた微視的かつ数値解析的アプローチに加え,バックライト法により撮影される気泡核の陰影を画像処理によって二値化することで,10~100マイクロメートルオーダに相当する気泡核のサイズ分布計測も行う.特に,水中の溶存空気量の指標となるDO(Dissolved Oxygen)値を変化させた実験を行い,水中における最も代表的な不純物である溶存空気が気泡核のサイズ分布に及ぼす影響について,巨視的かつ実験的アプローチからも検討を進める予定である.
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Research Products
(2 results)