2020 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ流体分画技術を用いた1細胞内構造体の泳動解析
Project/Area Number |
19H02072
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
新宅 博文 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 理研白眉研究チームリーダー (80448050)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電気泳動 / マイクロ流体工学 / RNA / 次世代シーケンス解析 / 1細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1細胞の細胞画像解析・電気泳動解析・遺伝子発現解析を統合する微小流路システムの開発を行った。本システムは微小流路を用いて1細胞の画像解析・電気泳動解析および遺伝子発現解析を実施し、それら異なる手法から得られたマルチモーダルなデータから多角的に細胞の状態を明らかにする。1細胞ずつ操作する既報のマイクロ流路と異なり、並列流路は細胞導入用の入り口流路から48本の電気泳動用流路が並列に枝分かれしている形状をしている。並列する48本の流路における電気泳動を蛍光顕微鏡で観察するため、高感度カメラを用いた。この時1視野は815 um x815umであり、電動ステージを用いて48本の流路間にある5カ所を巡回しながら撮影した。同一の位置で撮影した連続フレーム間の相互相関係数から蛍光分子の移動距離を計算し、それを元に一続きの画像を作成した。この画像を元にキャピラリー電気泳動等で取得できる電気泳動図を再構成することも可能である。ただし,本手法は2次元電気泳動図を取得することで、通常の1次元電気泳動図では検出が困難な微小な粒子状細胞小器官の検出等を可能にする。 本システムを評価するために,Calcein, AMで染色したK562細胞を用いた。生細胞はエンドサイトーシスによってCalcein, AMを取り込み、細胞質のエステラーゼによりアセトキシメチル(AM)エステルを切断することによって蛍光物質Calceinを蓄積する。エステラーゼは主に脂質の代謝を担う分解酵素であり、Calceinの輝度値はエステラーゼの代謝能を反映する。得られた細胞の蛍光画像と電気泳動図から細胞の形態やCalceinの蛍光強度が1細胞ごとに異なり、また電気泳動図も同様に細胞ごとに異なる様相を示すことがわかった。また、細胞画像と電気泳動における輝度値の積分値を比較すると正の相関が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1細胞の細胞質成分を電気泳動解析するシステムを構築できた。またこれを用いた細胞の解析を進めている。最終年度はこれと次世代シーケンス解析を統合し、多階層細胞解析を実現する。
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Strategy for Future Research Activity |
48並列流路に配置するためのカラーコードビーズの開発がほぼ完成段階に来ており、今後は微小流体システムとの統合を図る。カラーコードビーズはmRNA分子を捕捉した後、微小流体システムから回収して次世代シーケンス解析ライブラリの作製に用いる。カラーコードビーズから次世代シーケンス解析ライブラリを作製する手法はこれまで並行して進めてきており、これまでの開発事項を融合することで迅速に結果が得られると期待している。
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