2020 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental investigation and modeling of combustion characteristics of alkane isomers contained in next generation bio-fuels
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19H02078
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
下栗 大右 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (40432687)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 明 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (60229903)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 燃焼 / 次世代バイオ燃料 / 飽和炭化水素 / 化学的着火遅れ / 燃焼速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は,衝撃波管にてC9異性体の着火遅れについて実験的に,完全に網羅した.結果,飽和炭化水素異性体の着火遅れに関する一般則を見いだすことに成功した.さらに,台湾国立中央大学との国際共同研究によって,飽和炭化水素異性体の燃焼速度まで得ることができた.以上,実験的に得られた知見は,次世代バイオ燃料の燃焼特性の予測・制御に極めて有用であると考えられる.数値計算では,三好による反応機構自動生成プログラムKUCRSによって,着火遅れ期間・燃焼速度とも高精度に予測可能であることを明らかにした.さらには,高分岐異性体において中温域における着火遅れが長期化する原因,および燃焼速度が低速である原因について,反応解析によって明らかにした.着火遅れの長期化は,分岐の増加によって水素引き抜きにより大きなエネルギーが必要となる1級炭素に結合した水素の数が増えることに起因する.燃焼速度については,高分岐異性体において生成されるC3,C4中間体が,H,OHラジカルを吸収するループを形成してしまい,それによって低速化することが判明した. 以上,本年度は次世代バイオ燃料を構成する飽和炭化水素の着火遅れ,燃焼速度に関する基礎的な知見が得られたことから,最終年度である次年度は,さらに研究を深化し,次世代バイオ燃料の燃焼排出物を研究する.バイオ燃料の利用によって二酸化炭素排出が抑制されたとしても,人体に有害な未燃炭化水素や粒子状物質,あるいは光化学スモッグの原因となる窒素酸化物が規制値を下回らなければ,実用利用は不可能である.次年度は着火遅れや燃焼速度を求める範囲を拡大するのみならず,そのような環境汚染物質について,計測・数値予測を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目までに着火遅れ期間についてはノナン構造異性体について,系統的に明らかにすることができた.対象としたのは直鎖構造のノルマルノナン(n-C9H20),モノメチル異性体(2-methyloctane),ジメチル異性体(2,4-dimethylheptane,および3,3-dimethylheptane),テトラメチル異性体(2,2,4,4-tetramethylpentane)である.これらは分岐が増えるに従い,特に中温域での着火遅れ期間が長期化することが判明している.このように様々な異性体に対して,系統的に着火遅れ期間が明らかにされた例は少なく,今後の次世代バイオ燃料の燃料設計において極めて重要な指針となる.また, LLNL,KUCRS,Jetsurfの詳細反応機構を用いた数値解析も行い,実験結果がKUCRSによって高精度に再現されることも判明した. 加えて,台湾国立中央大学の協力により,着火遅れ期間の差が最も大きいn-C9H20と2,2,4,4-tetramethylpentaneに対して燃焼速度を得ることも実現した.結果,2,2,4,4-tetramethylpentaneにおいて燃焼速度が低いことが判明した. また,2年目には衝撃波管における根本的な問題点の改善にも成功した.衝撃波管では,Bumpと呼ばれる圧力ノイズが計測精度を大きく低下させることが明らかにされており,これまでにその対策はほとんど講じられてこなかった.これは衝撃波管の高圧・低圧セクション間でガスの混合が生じるためであるが,本研究ではこの混合領域を数値的にモデル化し,計算を行った.結果,条件に応じた混合気をこの領域に封入しておくことでBumpを抑制できる可能性が示された.実験的にもBumpを大幅に抑制することが確認され,これまでに全く手のつけられていなかった衝撃波管の大きな欠点を克服した.
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Strategy for Future Research Activity |
次世代バイオ燃料を構成する飽和炭化水素の着火遅れ,燃焼速度に関する基礎的な知見が得られたことから,最終年度である本年度は,さらに研究を深化し,他の次世代バイオ燃料の燃焼排出物を研究する.バイオ燃料の利用によって二酸化炭素排出が抑制されたとしても,人体に有害な未燃炭化水素や粒子状物質,あるいは光化学スモッグの原因となる窒素酸化物が規制値を下回らなければ,実用利用は不可能である.本年度は着火遅れや燃焼速度を求める範囲を拡大するのみならず,そのような環境汚染物質について,計測・数値予測を試みる.実験的には,粒子状物質の根源物質とされるアセチレン(C2H2)の測定を行う.量子カスケードレーザーを用いた赤外域での吸収法により,異性体間でアセチレンの生成濃度に変化が生じるか,計測を試みる.計算では,従来のゼロ次元モデルでは熱炎発生以降の再現は不可能であるため,一次元の詳細反応を考慮した数値計算を試みる.なお,これらは両者とも極めて挑戦的な課題である. また,他の次世代バイオ燃料候補成分との混合についても検討を開始する.本研究では主に油脂などから生成される水素化脂肪酸燃料と呼ばれる,飽和炭化水素で構成される燃料を対象としてきたが,燃焼機器によっては適さない可能性も有る.そこで考えられるのは他の次世代バイオ燃料候補成分との混合である.通常,燃料を混合すると,燃焼特性はその混合分率に対して非線形に変化する挙動をとるため,その予測は極めて困難で,基礎的な知見が不足している.例えば本研究では,炭水化物から生成されるフラン等,別の次世代バイオ燃料の候補成分の燃焼特性,およびそれらと水素化脂肪酸燃料を混合した際に,着火遅れ期間や燃焼速度がどのように変化するか,混合の影響についても検討に着手する予定である.
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Research Products
(5 results)