2020 Fiscal Year Annual Research Report
歪みエンジニアリングによるフォノンダイナミクス制御とデバイス展開
Project/Area Number |
19H02082
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
有江 隆之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80533017)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 和郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (30315163)
中山 健吾 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 研究員 (00736275) [Withdrawn]
村上 修一 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (70359420)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 熱フォノン / グラフェン / 歪み |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、二次元原子層内の電気・熱特性への歪みによる影響を明らかにするため、歪みを制御して印加しながら熱電特性、熱伝導特性を計測可能なデバイス設計と計測法の確立を目的として研究を進めた。2020年度は静電引力により歪みを印加可能なデバイス作製と、歪みを印加したときの熱伝導率への影響を調べた。 1.実際にデバイスに電圧を印加し、静電引力により変形させたときの変位を原子間力顕微鏡で調べ、印加した電界と歪みの関係を明らかにした。初期位置からの変位はおよそ0.5nm/Vであった。またラマン分光法によっても電圧印加により歪みに起因したラマンピークの波数変化を確認した。 2.電圧によりグラフェン内へ印加された歪みの同定は、ラマン分光法で行った。ここでラマンピークは電圧によるキャリアドーピング効果と変形による歪み効果でシフトするため、まずドーピング効果のみによるピークシフトを明らかにするため、基板上グラフェンを用い、電圧に対するシフト量を見積もった。さらに歪みのみによるピークシフトを気圧差による変形から算出し、ベクトル成分による分解を用いてそれぞれの効果を同定した。その結果、70Vの電圧印加によりおよそ0.1%歪みが印加されていることが分かった。 3.静電引力により歪みを印加し、歪みによるラマンピークシフトから熱伝導率の変化を計測した。歪みが入っていないグラフェンの熱伝導率と比較し、0.1%歪みを印加すると熱伝導率はおよそ70%低下することを明らかにした。各歪み量に対する熱伝導率変化は以前の気圧差による変化とほぼ同傾向を示し、歪みによる熱伝導の変化がグラフェン固有の特性であると結論づけた。これは歪みによりフォノンーフォノン散乱が増加し、平均自由行程が短くなることに起因していると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通り、電圧印加による静電引力を利用して歪みを印加可能なデバイスを作製し、実際に歪みを制御して印加したときの熱伝導率計測を行った。歪みとドーピングによるラマンピークシフトへの効果を切り分けることで、歪みのみによる熱伝導率えの影響を明らかにした。現在論文も投稿中であり、おおよそ計画通りであると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は歪みによる熱電特性の影響を調べるため、以下の2通りの方法によりデバイスを作製し研究を進める。1.転写時に歪みを印加したグラフェンを基板上に設置し、歪みを保持したままグラフェンの熱電特性を測定する。数%の歪みによりバンドギャップを形成することで熱電特性の向上が期待できる。2.周期的に細孔を設けた基板上にグラフェンデバイスを作製し、気圧差によりデバイスのチャネル部分に歪みを印加したときの熱電特性を計測する。ここでは歪み量はあまり期待できないが、グラフェン内の周期的なポテンシャル導入によりバンドギャップ形成が期待でき、熱電特性が向上することが考えられる。さらに熱電特性や熱伝導率の歪みによる影響の知見により、熱アクティブデバイスの設計と検証を行う。
|