2019 Fiscal Year Annual Research Report
動的濡れを駆使した自発的『メニスカス・ポンプ』機構の解明と最適化
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19H02083
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
上野 一郎 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 教授 (40318209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 琢磨 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50791513)
元祐 昌廣 東京理科大学, 工学部機械工学科, 准教授 (80434033)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 動的濡れ / メニスカス / 表面張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では『動的な濡れ』力学を駆使し,系外からの新たなエネルギー注入を必要としない超高効率液滴搬送機構,すなわち本研究で提案する『メニスカス・ポンプ』機構の解明を目的とする.マクロからミクロスケールにわたって多重スケールで展開する『動的な濡れ』力学に焦点を当て,基板上微小構造物との相互作用によって液滴前縁部が加速する機構の解明を目指す.具体的には,(1)自作装置による高精度光学計測実験,(2)液滴前縁部における微視的濡れ機構を考慮した理論解析,(3)マクロ・ミクロスケール界面熱流体数値解析,を融合したアプローチによって,液体と基板上構造物との連続的な相互作用と自発的加速を実現する本機構の解明を目指す.2019年度においては,(1) 異なる高さを有するピラー状構造物を用いた実験系の構築を行い,予備的研究結果を行った.(2) メニスカス形成初期におけるメニスカス内流動場に関する数値解析の知見をベースに,検討を行った.さらに,分子動力学に基づく動的濡れの解析に着手し,コンタクトラインの移動および接触角の関係について解析を進めた.(3) 単一および2つの球状粒子を用いた解析を行い,メニスカス形成による自発的加速現象とメニスカス内対流場の関係を明らかにした.また,複数の構造物が存在する場合により大きな加速が実現する現象を再現し,そのメカニズムを明らかにした.11月に渡仏し,フランス側の共同研究者とこれまでの進捗状況,投稿論文,今後の予定について打ち合わせを行った.本年度の研究成果は,学術論文2編(掲載済み),国際会議にて2件の発表を行った.なお,発表した学術論文のうち1編については,掲載誌のsupplement cover に選出された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請時に掲げた目標は以下の4点である. 【目標 1】液滴前縁部が基板上構造物に接触した際のコンタクトライン移動・メニスカス形成と,それに伴う液膜内速度場・圧力場計測を通じた,構造物周りの加速・減速機構の解明 【目標 2】複数の基板上微小構造との相互作用時の先行薄膜領域の実験的定量化,および,分子動力学によるその応力場解析 【目標 3】先行薄膜の過渡的形成過程を含むミクロスケール動的濡れ効果を導入した理論モデルの構築 【目標 4】液滴前縁部の駆動を連続的かつ効率的に実現する微小構造物群最適設計の体系化 このうち,目標1および目標2については,当初の計画以上に進展している.特に,数値計算による『メニスカス・ポンプ』機構に関する解析においては,単一および2つの球状粒子を用いた解析を行い,メニスカス形成による自発的加速現象とメニスカス内対流場の関係を明らかにして学術論文2編の発表に繋がったことは多いに進展していると認識している.特に複数の粒子を対象とした系において,局所的加速現象の機構の説明に至ったことは今後の研究進展に大きな意味をもたらす.一方で,実験的研究は知見の蓄積は進んでいるが,解像度の点で今後の改善が必要であると考えている.また,理論的アプローチについても,継続的に進めていく必要がある.なお,COVID-19の世界的感染拡大により,3月は研究室活動を停止,4月から5月末にかけては大学の入構禁止措置により,実験的研究は完全にストップ,数値解析についても昨年度と比べてきわめて進度が遅れているのが現状である.6月以降の研究活動の状況については現時点では不明である.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究において,メニスカス内部流動に関する解析が進み,これまでの実験的研究では気付いていなかった興味深い現象を発見することが出来た.2020年度においては,この内容について精査し,『メニスカス・ポンプ』機構およびその性能との関係性を明らかにしていきたいと考えている.解像度的に厳しいのは認識しているが,実験においてもこの数値解析で得られた知見を実証していく方向で研究を進めていきたい.分子動力学的解析は,今後も研究を重ね,マクロ的視点での動的濡れ現象との相関を明らかにしていく予定である.この成果により,マクロ的数値解析の解釈を深化することが出来ると考えられる.複数の微小構造物を用いた系における解析は,実験的なアプローチが難しい点がいくつか判明しており,その点の克服に注力したい.2020年度においては,(1)共同研究者を招聘し研究代表者のグループとの合同実験,(2)研究成果の国際会議での発表を予定していたが,COVID-19の世界的感染拡大によりいずれも困難になったと考えている.特に,4月から5月末にかけては大学の入構禁止措置により,実験的研究は完全にストップ,数値解析についても昨年度と比べてきわめて進度が遅れているのが現状である.共同研究者との遠隔会議などを通じて別の取り組みを模索し少しずつでも研究を進展していく予定である.今年度においても,研究成果を学術雑誌等の媒体に発表していきたいと考えている.
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Research Products
(13 results)