2019 Fiscal Year Annual Research Report
金属/酸化物/金属3層薄膜における特異熱輸送の学理構築
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19H02087
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山下 雄一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60462834)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サーモリフレクタンス法 / 熱伝導率 / ナノスケール / 多層薄膜 / 分子動力学法 / フォノン熱伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では金属/絶縁体/金属の3層構造薄膜における特異熱輸送について、分子動力学法およびフォノンボルツマン輸送方程式を用いたナノスケール熱輸送計算、3層薄膜試料作製とサーモリフレクタンス法による熱応答計測実験という二つのアプローチから発現原理解明に取り組んでいる。 今年度は絶縁体薄膜(およそ10 nm未満)における熱輸送機構を数値計算から明らかにするため、分子動力学法と2温度モデルをカップリングさせたハイブリッド分子動力学法による金属/絶縁体/金属多層薄膜の熱伝導率計算プログラムを開発した。ハード面では高性能ワークステーションを導入し、研究遂行に十分な能力を有する点を予備的計算から把握した。また、フォノンボルツマン輸送方程式をベースとした手法も用い、実験における熱応答を評価した。 実験的アプローチでは、高誘電率材として知られる酸化ハフニウム薄膜をALDにて堆積させる手法を試行し、3~11 nmの酸化物層を膜厚100 nmのMo層で挟んだ3層構造試料の作成に成功した。時間領域サーモリフレクタンス法を用いて、複数の3層構造試料を評価し、良好な熱応答曲線を得た。フォノン散乱の特異熱輸送への影響を把握するため、クライオスタットを導入し、低温下における熱応答計測の環境を整えた。さらに低温環境下での複雑なパラメタフィッティングに対応し、測定・解析の高速化・精緻化の同時に狙う機械学習を援用する熱応答評価法を開発した。 代表的な研究成果として、フォノンボルツマン輸送計算では、ZnO薄膜における熱応答の膜厚依存性および面内方向の熱輸送をPRTEC2019にて発表し、粒界散乱の影響を第56回日本伝熱シンポジウムで発表した。第40回日本熱物性シンポジウムでは、機械学習を援用した測定信号解析技術を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、高誘電率を有する酸化ハフニウム薄膜をモリブデン薄膜で挟んだ3層薄膜試料の作成に成功し、時間領域サーモリフレクタンス法にて、熱応答信号を取得した。数値計算においてはハイブリッド分子動力学プログラムを開発し、定常非平衡計算から熱抵抗および熱伝導率を評価する下地を整えた。現在成果の一部を投稿論文として準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的アプローチでは、ドーピングにより導電性を持つ酸化物に着目し、縮退半導における特異熱輸送の発現を評価していくことで、電気特性と特異熱輸送との関係を明らかにしていく。加えて低温環境下での熱応答取得に挑み、フォノン散乱因子と特異熱輸送との関係を明らかにしていく。 数値計算からのアプローチでは、非平衡分子動力学計算を用い仮想物質における質量差の影響、アモルファス化の影響を検討する。さらに実験的アプローチに合わせてわずかに導電性を持つ物質における有効熱伝導率変化、温度分布を明らかにしていく。
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