2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on gyroscopic power generator rotated by friction force caused by random vibration
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19H02091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保坂 寛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50292892)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジャイロ / 発電 / 空調服 / 人体装着 / 振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
空調服等に使用する人体装着発電機では,大出力(1W程度),小型(1L以下),低周波対応(1Hz程度)が要求される.まず低周波化のため,トラックを円形に改良した.従来は直線トラックを用いており,4Hz以上の加振周波数を要していた.円形にすると歳差角を大きくとれ,同一の自転速度での歳差振動周期が長くなる.フライホイール(FW)はφ70の真鍮円板,発電部はそこに内蔵した扁平モータからなる実験機を製作した.トラックは樹脂の円輪枠にφ4のシリコンゴムチューブを固定し,トーラス状かつ摩擦を大きくした.実験により,2Hzの加振で0.25Wを発電した.これにより,低周波化の見通しを得た. 次に高出力化のため,発電モータを改良した.モータの電気機械変換効率はほぼ体積に比例する.装置サイズを変えずにモータの実効サイズを拡大するため,磁石とコイルをジャイロ内に分散配置した.磁石はFWに,コイルは内ジンバルに固定した.磁石の選択自由度を高めるため,アキシャルギャップ型として平面磁石を使用し,コイルを1mm程度に近接させた.またコギング除去のためコイルは空芯とした.以上によりトルク定数を大きくし,内部抵抗を小さくできた.従来と同一サイズのFWで,1.7Hzの加振で1Wを発電した. 次に小型化のため,増速機構を改良した.これまでの自転増速は,歳差トルクにより自転軸を旋回させ,FWの外に設置したトラックと自転軸の摩擦で自転トルクを得ていた.この構成ではトラックはFWより大きくなり,かつ,増速比はトラック直径で決まる.この制約を除去するため,傘歯車とクラッチによる自転増速法を考案した.トラックが無いため小型であり,歯車の多段化により増速比を増大できる.増速比3,フライホイールφ300の実験機を製作した.0.5Hzの振動で200rpmで自転した.これにより,増速方式の基本的妥当性が確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験については本年度の目標をほぼ達成した.目標値がFWφ80,厚さ10,材料タングステン,入力1.5Hz,出力1Wに対し,実現値はFWφ70,厚さ20,材料真鍮,入力1.7Hz,出力1Wである.入力周波数が目標値よりわずかに高いが,FWが目標値より小型軽量化されており,総合性能としては同等である. さらに,新たな歯車増速機構を考案し,実験機の製作と動作確認を行った.この方式は,ジャイロ発電機の小型高出力化を不連続に進歩させる可能性があり,当初計画を上回る成果である. 理論計算については,今期は進捗が無かった.その理由は,理論計算の目的は発電機の最適設計であり,当初は摩擦駆動方式の最適化を狙っていた.しかしより優れた歯車駆動方式を発案したため,その最適設計に方針変更し,新方式の妥当性検証を優先したためである.本年度に実験検証が出来たので,次年度に理論計算を行う予定である. 以上により,実験は計画以上,理論は計画以下の進捗であり,総合的には計画と同程度の進捗と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
発電機をモータとして使用する自己起動と,昇圧制御による発電量の増大を行う.本発電機は起動に自転の初速が必要である.そこで予めキャパシタを充電しておき,静止した発電機に電力を供給し,モータとして作用させる.一度自転が始まると,以後はジャイロ効果と自転の正帰還が発生し,増速する.増速が始まったらスイッチを切り替え,キャパシタに充電する.キャパシタが満充電になったら,スイッチを切り替え負荷に電力を出力する.フライホイールの回転を増大させるには,コイルに加える電圧を磁石の回転に同期して反転させる必要がある.そのため,コイル近傍に磁気センサを設置し,磁石の位置を検出し,コイルと電源の接続を制御する. 昇圧制御は,歳差振幅を計測し,常に許容振幅(自転軸がトラック端に達する角度)に一致するように,コイルから負荷への昇圧比を変化させる制御である.発電量は電磁ダンピングC(自転軸から見た発電部の機械インピーダンス)が小さいほど大きく,Cは許容振幅と歳差振幅が一致するときに最小となるため,この制御により発電量が最大となる.Cは昇圧比すなわちチョッパのデューティ比で制御できる. また,歯車増速方式の発電機を製作する.本年度に考案した増速機構のフライホイールに永久磁石を,ジンバルにコイルを装着し,電磁誘導により発電させる. また理論解析により,製作した発電機の特性を計算する.これにより,発電機の最適設計の指針を得る.
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Research Products
(1 results)