2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on gyroscopic power generator rotated by friction force caused by random vibration
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19H02091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保坂 寛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50292892)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジャイロ / 発電機 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に考案した歯車増速型の理論解析を行った.他のジャイロ発電と異なる点は,クラッチの噛み合いと空転が交互に発生することにある.ジンバルに固定した2つの回転座標系によりFWの運動エネルギとポテンシャルエネルギを求め,ラグランジュの方程式によりFWの運動方程式を立てた.空転時は自転と歳差が独立の自由度とし,噛み合い時は両者が従属でギヤ比倍で比例とし,それぞれの運動方程式を立てた.シャフト・スリーブ間のトルクと相対速度により,空転と噛み合いを判別し,運動方程式を交互に解いた.次に,実験により理論を検証した.FWは外径300mm,厚さ5mmのドーナツ型円板2枚,ギヤ比3,振動は加振機で与え,振幅10°,周期1.5s,2sとした.両者で回転数の実験値と計算値が一致し,また,1.5sでは時間とともに自転が増速し,2sでは減速した.以上により理論の妥当性を検証した. 遠洋ブイへの応用を目的に,2自由度のジャイロ発電機を製作した.遠洋では係留が出来ないため,あらゆる方向からの波で発電する必要がある.モータ自転型において,自転軸を鉛直方向とし,FWを3重ジンバルで支持することで,水平面内の任意の波で発電可能とした.また,自転速度により固有振動数が変化することを利用し,入力振動に応じて自転を変化させ,共振により発電量を増大させた.理論と実験により,回転数を10%変化させることにより,発電量が3倍程度増大すること,共振時は自転軸が円状に旋回することを示した. ジャイロ発電では自転に初速度が必要なため,発電機をブラシレスモータとして作用させる自己起動法を開発した.摩擦自転型に対して,ホール素子により自転角を計測し,角度に応じてコイル電流を変化させた.停止状態から起動し,外力振動を加えると増速し,発電することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的は,人体装着型のジャイロ発電機であったが,新たな応用として漁業用波力発電ブイを見出した.海上は電池交換や太陽光パネルの清掃が不可能であり,また海洋波は0.5Hz以下と低周波なため単振動型では発電効率が低い.このため,ジャイロ発電の有用性が高い.目標仕様は,人体装着では1L,1Hz,1W,発電ブイでは20kg,0.5Hz,10Wである. 初年度には,人体装着型に対し,円形トラックによる低周波化,シリコンゴムチューブによる転がり摩擦の増大,磁石とコイルの分散配置による電磁誘導効率の増大により,1.7Hzの加振で1Wを発電した.発電ブイに対して,傘歯車とクラッチによる歯車自転方式を考案し,増速が可能なことを確認した.本年度は,歯車自転型に対し,理論解析により自転速度を求め,実験との一致を確認した.また,ジャイロ発電の増速に必要な初速度付与の方法を実験により確認した.残る1年で,人体装着では,目標値を満たすプロトタイプを製作できる見込みである.発電ブイでは,目標値を満たす設計条件を明らかにできる見込みである. 当初計画では,摩擦自転型に対して昇圧制御により出力を増大する予定であったが未実施である.次年度に,より簡単な機構の最適化により目標性能を得る計画である.また歯車自転型に対して,電磁誘導により発電を行う予定であったが未実施である.一方で,増速機構の理論計算が順調に進み,最適設計への道筋が出来,全体としての遅れはない.また当初計画を越えて,モータ自転型で2自由度の発電機構を開発し,遠洋ブイへの応用を拓いた.全体として,当初計画と同等の成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
人体装着用の摩擦自転型と,発電ブイ用の歯車自転型,モータ自転型の発電機を並行して開発する. 摩擦自転型では,理論と実験による性能向上を進め,最終的にウェアラブルサイズで1Wを発電するプロトタイプを製作する.理論解析では,歳差反転時のトラックと自転軸の滑り損失を計算式に反映する.反転時に歳差速度はゼロとなるが,自転は継続するため,転がり条件が成り立たないためである.反転の滑り時は歯車増速型のクラッチ空転時と同じ扱い,転がり時はクラッチ噛み合い時と同じ扱いとすることで解決する.実験では,発電機のすべての自由度を計測可能な装置を製作し,計算値との一致を確認する.プロトタイプについては,実験,計算結果に基づいて小型化と出力増大を行い,体積1L,出力1Hz,1Wを達成する.またジンバル等ジャイロ効果に寄与しない部品を樹脂化し,全体を軽量化する. モータ自転型では,ジャイロ発電機の波力発電への適用可能性を検証するため,造波水槽で実験を行う.プイに発電機を内蔵し,FWを一定回転させ,浮体運動によりどの程度の発電が可能かを測定する. 歯車自転型は,理論上は,摩擦損失がモータ型と同程度,銅損が摩擦型と同程度であり,3方式では最も効率が高い.一方で,部品数が多いため小型化が難しい.そこで波力発電用の本命と位置付け,最適設計した場合の発電量を予測する.まず本年度の回転機構に磁石とコイルを装着し,実際に発電することを確認する.また本年度の計算法を用いて,一人で運搬可能なサイズ(20kg)の発電機で発生可能な発電量を見積もる.
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