2021 Fiscal Year Annual Research Report
Self moving fluidic actuator using acoustic radiation force
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19H02092
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒澤 実 東京工業大学, 工学院, 准教授 (70170090)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクチュエータ / 圧電素子 / 超音波 / 非線形音響 / 音響放射力 / 音響流 |
Outline of Annual Research Achievements |
弾性表面波基板を用いた液中アクチュエータの応用として,駆動IDTに加えて反射器IDTを設置することで,一方向に効率よく伝搬する電極構造とした駆動周波数約10 MHzの素子を用いて,音響流駆動によるアクチュエータを検討した。2枚の弾性表面波素子を対向して設置して,素子の配置と素子間隔を変えて実験したところ,素子を端部に設置し,素子間隔を狭くすることで,より大きな推力の得られることを明らかにした。しかし問題点として,駆動IDTから放射された表面波が,反射器に到達する前に,水中に放射されてしまい,一方向に表面波が効率よく伝搬させることが難しいことがわかった。 この実験結果から,アクチュエータとしての動作は確認されたが,より効率よく動作させるためには,電極構造を再検討する必要があることがわかった。解決策としては,駆動電極内部に反射用浮き電極を設置するなど,駆動電極と反射器が一体構造となった一方向性電極の採用が必要であることがわかった。 円板形状の素子の,厚み振動を利用したバルク波デバイスによるアクチュエタについては,デバイス表面に発生する音響放射圧の利用に加え,新たに音響流を推力に変換する構造の検討を行った。約2 MHzで厚み共振する圧電素子を用いた。 音響流を推進力として利用するため,圧電振動子の前方に流路が形成されるように樹脂による囲いを設置した。囲いには,振動子放射面前方に噴出口を設置し,振動子の脇には吸入口を作製した。噴出口の直径を2 mmから9 mmの間で5種類作製し,それぞれ推力の測定を行った。推力としては,1.1 mNから1.5 mNが得られた。直径3 mm以上ではほぼ同じ推力となり,噴出口の直径が大きい方がやや大きな推力となる傾向となった。囲いの無い音響放射力による場合は2 mNの推力が得られており,音響流による推力はやや小さな値であるが,推力を得ることができ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弾性表面波素子を用いたアクチュエータでは,対向した2枚の素子配置により,音響流による駆動を試みたところ,推力を得られることがわかった。素子間隔を2 mmとした場合に推力最大となったが,さらに狭い素子配置での検討により,推力増大が期待できる可能性がある。また,意図したのと反対方向への音波放射が強く起きたことから,電極構造を見直す必要があるが,電極構造の見直しにより,より効率よく推力を得ることが期待される。音響放射圧の利用とともに,音響流を利用したアクチュエータの性能向上も期待されると考えられることから,アクチュエータとしての可能性を広げることが期待できる成果であると考えるが,今後の検討課題にたいしての取り組みが必要である。 円板状圧電素子によるバルク振動を用いたアクチュエータでは,音響流駆動の可能性が示されたが,流路内を音波がどのように伝搬し,効率よく音響流を利用して噴出口から音響ジェットを生成させることが可能であるか,さらに検討を有する状況である。まだ,理論的な検討が不十分ではあるが,今後,流路内の音場と流路の最適化を行うことにより,推力を増加させることが可能であると考えている。音響放射圧による推力よりも大きな推進力を音響流駆動により実現する可能性が期待できる。 推進力に関する理論的な検討はまだ不十分であり,理論と実験の一致には至っていない。この点についてはやや研究が遅れており,今後十分な取り組みと理論的な解析,解析を裏付けられるような精度の高い実験を行っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
推進力に関する信頼に足る理論について既存の理論適用を検討しているが,理論的に推力をもとめる解析解についてはなお検討を進める必要がある。また,推進力として用いることのできる非線形現象が3つあることから,これらの寄与と活用について検討を進める。 弾性表面波デバイスを用いた液中アクチュエータでは,流体の粘性の変化により駆動特性がどう変化するかを検討する。そのため,添加剤の濃度を変えることで水の粘性を変化させ,駆動力がどのように変化するかを実験的に検討する。また,推力の発生原理と考えられる非線形効果に対する粘度の影響を考慮することで,推力を発生している非線形効果が何であるかを明らかにする。 弾性表面波デバイスについては,一方向性電極を用いたデバイスの検討を行う。前年度の検討で,駆動用電極と反射器電極の組合せでは,両方向に音波の放射が起きてしまうことから,駆動電極内に反射器を組み込んだタイプの一方向性電極の利用が可能であるかを解析により検討を行う。 バルク波デバイスを用いたアクチュエータでは,その運動性能を高めるために,操舵について検討を複数素子での研究を進める。それぞれの素子については,振動速度が振動面内で分布することから,振動分布特性を表現できる電気機械等価回路モデルの検討を引き続き行い,入出力関係を定量的に求められるようにする。このため,これまでに行った,厚み振動及び周方向振動のモデルに,両者の結合を加味することで振動分布を表現できるモデル化の検討を進める。このモデルにより,電気入力に対する振動の発生,振動の発生から音響放射力による推力の発生を記述する等価モデルを求める。音響流を利用したアクチュエータ構成についても理論的な解析とともに実験を行って,推力増加を図る。
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Research Products
(4 results)