2019 Fiscal Year Annual Research Report
サイバーがれきフィールド:レスキューロボット性能評価と操作訓練の統合環境の構築
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19H02099
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野里 雅彦 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (80177279)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 仮想がれき / 物理エンジン / 木造家屋モデル / シミュレーション / ユーザインタフェース |
Outline of Annual Research Achievements |
3年間の研究期間の初年度にあたる2019年度は,研究計画に従って,仮想空間において木造倒壊家屋のがれきを生成・利用するシステム環境であるVirtual Gareki Laboratory (VGL)の調査,設計,実装試作を中心に実施を行った. VGLに関しては,1)破壊と衝突のプロセスを計算する物理エンジンの高速で安定な利用法,2)屋根瓦など,木造家屋の倒壊に強い影響を持ち,形成されるがれき表面を覆う構造部材のモデルへの導入,3)レスキューロボットや建機に広く使われるクローラベルトによる走行機能のシミュレーションによる実現,について研究開発を進めた. 物理エンジンに関してはこれまでNVIDIA社のPhysX 3.3を中心に研究利用を行ってきたが,2019年度においてはGPU利用等で改良が加えられたPhysX 4.1の導入を進めた.また,2020年度に公開されるPhysX 5.0への対応準備も開始している. 家屋モデルに関しては,老朽化した木造建造物で広く用いられている瓦葺きの構造分析と倒壊シミュレーションへの組み込みを行った.これにより,倒壊した木造家屋の二階屋根から屋根瓦や屋根板等を剥がして家屋内に入り探索するプロセスを模擬できるようになった. クローラベルトに関しては,従来良く用いられていた車輪列によるクローラの模擬ではなく,現物に忠実なベルト要素の連鎖によるモデル化を進め,安定な挙動計算のための条件探索を進めている.これについては継続中である. これら仮想空間を対象としたVGLの他に,実機の挙動を分析・評価する環境である模擬がれきテストフィールドの試作を行った.規格化された木材(模擬がれき要素)を乱雑に積み上げた模擬がれきを5視点からデプス画像を取得し,VGLに反映させるもので,次年度の本格的な開発の基礎を構築できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の中心課題であるVGLの実装に関して,物理エンジンにNVIDIA社のPhysX 4.1を使用して開発を進めていたが,同社より権利の公開と機能強化を進めたPhysX 5.0が2019年12月にプレス発表され,2020年の早い時期にリリースされるとの情報を得た.そのため,VGLの開発を一旦保留してNVIDIA社によるPhysX 5.0の公開を待ち,その間にVGLのユーザインタフェース周りと模擬がれきテストフィールドの検討と試作を先行して進めた. また,2月~3月に関連学会等の研究者と意見交換を行うことを計画していたが,新型コロナウィルスの感染拡大防止のため,学会講演会の開催中止や出張自粛があり,主にネット経由での意見交換に制限された.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について,A)保留事項の再開,B)継続事項の発展,C)新規項目の開始,の3つに分けて説明する. A)としてはPhysX 5.0の導入である.粒子法の提供など従来になかったシミュレーション機能が提供されることから,公開後,速やかに導入できるように準備をすすめる.予定では2020年度の早い時期にリリースされるので,次年度上半期に実施する. B)については,木造家屋モデルと倒壊プロセスシミュレーションの安定実行の実現,クローラ型レスキューロボットの仮想がれき上の自動走行について,量と質の両面から研究をすすめ,家屋モデルとレスキューロボットモデルのライブラリを構築し,その一部を外部に公開する. C)については,一部先行実施した模擬がれきテストフィールドの開発・実装と,それに対してVRやARを用いた臨場感のあるがれきとそこで活動するレスキューロボットの情報提示を行うユーザインタフェースの実現がある. これらの他に,新型コロナウイルスの感染拡大によって控えている研究者との意見交換や,レスキュー関係の従事者との意見交換などを行い,本研究課題の成果が実務に対して貢献できるものになるように研究計画の評価を行っていく.
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