2019 Fiscal Year Annual Research Report
受動的力学機序と深層学習を融合したヒトに近い歩行・走行ロボットの開発
Project/Area Number |
19H02109
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐野 明人 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80196295)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池俣 吉人 帝京大学, 理工学部, 講師 (70467356)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 歩行・走行ロボット / 受動的力学機序 / 深層学習 / ヒト歩行・走行 / ロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,ヒトの歩行および走行の特徴である膝をやや屈曲したまま着地動作を迎え,その後,適切な膝運動を行うことに成功した.まず,歩行ロボットでは,膝関節カム・バネ機構および膝蓋骨付き膝伸展ワイヤ駆動機構,さらに膝伸展空圧システムを開発した.実験の結果,ヒトのように着地前に一旦伸展した後に少し屈曲して着地する脚運動を再現し,さらにヒールロッカー機能と協調して膝伸展しながら下腿の前方移動をスムーズにした.走行ロボットには,空圧アクチュエータを用いた膝関節・足関節駆動システムを新設した.実験の結果,ヒト走行と同様に着地後に受動的な膝屈曲をし,その後,瞬発的に膝伸展に転ずることが確認された.このとき,従来よりも明確な推進力の生成を実現した.一方,接地時に股関節トルクを低減させる接地制御を行うことで,後傾を抑制して走行姿勢を適切に維持することができた.また,着地時の受動的な膝屈曲が促されて着地の衝撃が緩和され,過度の跳ね返りが抑制された.結果的に,膝駆動による蹴り動作との相乗効果を生むこととなった.なお,接地期に膝が真直ぐな走行に比べ,接地時間が150~200[ms]程度まで増大した(ヒト走行と同程度).
ヒトは,重力によって倒れると言った弱みを素早く移動するために敢えて利用することで強みに変えている.このような視点は,受動的力学機序と深層学習の融合において重要だと考えた.本年度は,ヒト歩行にも通ずる倒立振子を対象に,強化学習により重力と慣性を活かした戦略を獲得した.重力や慣性の活用度合いが賢さを推察する手掛かりとなっている.また,不安定性を活かした運動性を引き出すためには,リカバーできない倒れ以外は許容する必要があり,報酬の与え方は安定性と運動性を共創し得るものだと考えている.さらに,Sim2Realを念頭に仮想環境で機械学習を用いた受動歩行の調子評価を行い,その妥当性を検証した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受動的な力学機序を規範とすることは普遍性があり,これを歩行・走行ロボットの両方の開発において継続して実践している.現在までに,歩行および走行の力学的な共通基盤を発見し統合を進め,股関節カム・バネ機構の共通化に加え,ヒトの歩行および走行の特徴である膝をやや屈曲したまま着地動作を迎え,その後,適切な膝運動を行うことに成功している.歩行では,ヒトのように着地前に一旦伸展した後に少し屈曲して着地する脚運動を再現し,さらにヒールロッカー機能と協調して膝伸展しながら下腿の前方移動をスムーズにした.走行では,自然な膝屈曲からの伸びやかな蹴り動作を創出し,走行姿勢の維持や推進力の確保を達成した.走行中に空圧システムを稼働するとブーストされたような感じで疾走する.受動歩行由来の歩行および起こし回転由来の走行において,長年に亘り膝を伸ばした歩行・走行を行ってきたが,本研究は大きな転換点となり当初目的はほぼ達成された.なお,足部に関しては,より高い運動性能を達成するために機能を分化し形状・機構を変えている.さらに,操作スキルに関わるオンラインパラメータ調整の予備的実験を実施し,Sim2Realを念頭に仮想環境で機械学習を用いた受動歩行の調子評価を行った.以上のことから,おおむね順調に進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,歩行・走行の力学的な共通基盤として慣性揺動に着目する.なお,現在,歩行ロボットは約23kg,走行ロボットは約12kgと質量が異なっているが,慣性効果を考慮して単一機体の開発を視野に入れる.また,自律化に向けて,ロボットへの空圧アクチュエータやDCサーボモータの搭載を推進する.さらに,人の操作スキルを教師あり学習・模倣学習の教師データとして利用することを考える.一方,腕振り運動は,深層強化学習なども取り入れて,運動生成と効果に関して検討を加える.なお,深層学習に活用し得るように,歩行・走行の安定性を一段と高めて高性能センサや高速ビジョンを使って有用なデータ収集を推進する.
|
Research Products
(17 results)