2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H02123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 洋一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50165578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑 勝裕 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70837294)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電気自動車 / ワイヤレス給電 / 走行中給電 / 電力制御 / ロバスト制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,走行中の電気自動車に非接触で直接エネルギー供給を行うインフラ構築を念頭に置き,諸種のパラメータ変動に強いシステムを実現するために必要な基盤技術の開発を目的とし,実用性を強く意識した研究開発を行っている。 本研究では磁界共振結合方式の改良を基本とし,ハードウェア構成と制御系の工夫によって,いかに現実的なシステムを構築できるかを検討しているが,走行中ワイヤレス給電の地上側設備は長距離にわたって敷設するため,きわめて簡単なものにしなければならないことは明白である。しかし,これほど大規模なシステムを安価に,そして大量に導入するとなれば,各部品の製造誤差や環境変化による影響を真剣に考えなければならない。そのため,①地上側の送電設備はきわめて簡単でなければならないがクルマ側は多少手の込んだシステムでもよい,②特性変化に対するロバスト制御が鍵をにぎる,③自動走行の技術を活かすなど,停車中給電では必ずしも必要でなかった要求を解決しなければならない。これらの観点に基づいて,真に将来につながる走行中ワイヤレス給電の研究開発に取り組んでいる。 走行中ワイヤレス給電のロバスト化に向けた研究課題の具体的な項目として,1. パラメータ変動による特性変化の解析,2. パラメータ変動に強いシステム設計,3. 外乱や変動を考慮したロバスト制御,の3つに注力して研究開発を実施しているが,これ以外の関連技術として,4. 追加のセンサを用いない車両検知,5. 高速な過渡現象の解明と制御応用,6. 自動走行技術の利用と融合,についても取り組んでおり,それぞれにおいて当初の計画通りの成果が得られている。詳細をここで論ずるスペースはないが,後述する多くの発表論文(本報告書では2019年度の1年分)によってその成果は裏付けられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
走行中ワイヤレス給電のロバスト化に向けた3つ研究課題において得られた研究成果は下記の通りであり,順調に進展している。 1. パラメータ変動による特性変化の解析:磁界共振結合方式の走行中ワイヤレス給電では,電力伝送に用いるコイルと共振条件を調整するコンデンサの製造誤差や環境変化の影響が生じる。共振条件を仮定すれば多くの特性はシンプルかつ明瞭に表されるが,クルマの走行にともなう結合変化や負荷変動までを含めた複合的なパラメータ変動に対して,実条件で利用できる特性解析はいまだ示されていない。本研究では諸種のパラメータ変動が伝送特性に与える影響の傾向や度合いを見積るため,基礎的な解析手法を提案した。 2. パラメータ変動に強いシステム設計:先述の解析手法に基づき,補償あるいは抑圧すべきパラメータ変動に見通しを立てるため,ハードウェア構成と制御系で対処すべき課題の見極めとシステム設計における体系的な検討を開始した。ハードあるいはソフトの一方に固執することなく,回路構成と制御系の統合設計についても検討中である。 3. 外乱や変動を考慮したロバスト制御:実条件で不確かな外乱やパラメータ変動が生じるシステムにおいて,これらの影響を低減するロバスト制御が現実的なシステム構築の鍵をにぎる。なお,本研究ではロバスト制御に限らず,外乱オブザーバや適応制御をベースとした制御系設計など,さまざまな制御理論を応用しながら,走行中ワイヤレス給電に適した制御系設計について検討している。 これらの技術の連携・融合をもって,真に将来につながる走行中ワイヤレス給電システムに発展させていくが,このほか,4. 追加のセンサを用いない車両検知,5. 高速な過渡現象の解明と制御応用,6. 自動走行技術の利用と融合,についても取り組んでいる。ただし,これらの成果の詳細については省略する。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には走行中ワイヤレス給電のロバスト化に向けた3つの研究課題を継続して実施する。その中で,それぞれ得られた研究成果を活かしながら,これらの技術の連携・融合をもって,真に将来につながる走行中ワイヤレス給電システムを構築する。特に,今後は下記の通り実施する計画である。 1. パラメータ変動による特性変化の解析:磁界共振結合方式の走行中ワイヤレス給電では,電力伝送に用いるコイルと共振条件を調整するコンデンサの製造誤差や環境変化の影響が生じる。これまで複合的なパラメータ変動に対して,実条件で利用できる特性解析に着手し,諸種のパラメータ変動による伝送特性の変化を定量的に見積り,ロバストなシステム構築に向けた解決手段を探った。基本的な電力伝送特性は明らかになってきたが,今後はこれらの成果を体系的にまとめ,システム設計に活用できる手法を検討する。 2. パラメータ変動に強いシステム設計:これまでに得られた特性変化の解析手法をベースに,補償あるいは抑圧すべきパラメータ変動に対してハードウェア構成と制御系で対処すべき課題を切り分け,システム構築を行う際の回路トポロジーや制御構造などに落とし込む。より具体的には,各回路ブロックを個別に最適化するのではなく,実機測定の結果をベースにしながらシステム全体の特性改善に向けた検討を実施する。 3. 外乱や変動を考慮したロバスト制御:実条件で不確かな外乱やパラメータ変動が生じるシステムにおいて,これらの影響を低減するロバスト制御が現実的なシステム構築の鍵をにぎる。なお,本目的を達成する手段はロバスト制御に限らず,外乱オブザーバや適応制御をベースとした制御系設計など,多岐にわたるため,今後も走行中ワイヤレス給電に適した制御系設計の基盤技術について探求する。また,これらの実装手段や汎用性を検討し,インフラ構築に向けた見通しを立てる。
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Research Products
(20 results)