2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Laminated Solid Electrolyte for Long-life All-solid-state Batteries with Lithium Metal Anode
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19H02128
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
稲田 亮史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345954)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酸化物固体電解質 / 金属リチウム負極 / 全固体電池 / 積層構造 / 界面抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
高い安全性を有する全固体電池の高エネルギー密度化に向けて,金属リチウム(Li)負極の利用が検討されている。本研究では,高密度な固体電解質(SE)焼結体上に数~数10μm程度の低密度なSE層を積層し,低密度層とLi間にて固体間界面を形成することによって,実効的な接合面積の増加による界面抵抗低減と,1mA/cm2以上の電流密度下でのLiの溶解・析出反応に対する界面の安定化の達成を目標としている。2020年度の主な研究成果は下記の通りである。 (1) 低密度固体電解質厚膜の形成条件の確立 SE材料として,高いイオン伝導率と電気化学的安定性を備えたガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物を使用し,エアロゾルデポジション(AD)法を利用して石英基板上に異なる膜厚(数~10μm程度)のSE膜を形成した。膜形成が効率的に行われる原料粒子径等の成膜条件を見出し,更に成膜後に800℃程度で後熱処理を行うことで,1μm程度の粒子が三次元的に連結した低密度SE厚膜が得られることを確認した。 (2) 高密度固体電解質焼結体上への低密度固体電解質厚膜の形成 (1)の結果を踏まえて,別途作製した高密度SE焼結体を基板として,AD法により数~10μm程度)のSE膜を形成した。石英基板上の場合と同様に,焼結体上にもSE膜を形成することが可能であり,800℃にて後熱処理を施すことにより,1μm程度の粒子から成る低密度SE膜が得られた。XRD測定より,低密度SE膜は高密度SE焼結体基板と同様,ガーネット型結晶構造を有することを確認した。また,膜厚と膜重量から,低密度層の充填率(相対密度)は75%程度と見積もられ,焼結体基板との結着性も比較的強固であった。試行として,低密度SE層と金属Liとを圧接し,両者の界面における電荷移動抵抗(界面抵抗)を評価した結果,室温下で80~90Ωcm2程度と見積もられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石英基板を用いた予備検討により,AD法によるガーネット型酸化物固体電解質の膜化に向けた原料粒子の調整条件と後熱処理条件の適正化により,低密度固体電解質層の作製条件を概ね確立することができた。また,基板を別途作製した高密度固体電解質(焼結体)とした場合にも,石英基板上と同様な手法で強固な結着性を持つ低密度固体電解質層を形成出することができた。更に,得られた低密度固体電解質層と金属Liとの接合に向けた予備検討を行う等,次年度の研究に向けた準備にも着手している。 以上より,研究は概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)積層型固体電解質と金属リチウムの接合界面形成条件の検討 高密度な固体電解質焼結体の両端面に低密度固体電解質層を形成した後,金属リチウムを両端面に圧接して対称セルを構成する。対称セルに対し,様々な条件で加熱処理を施した後,電気化学インピーダンスを測定し,金属リチウム―積層型固体電解質間の電荷移動抵抗(界面抵抗)を評価する。低密度層の厚みや微細組織の違いが,接合界面の状態や界面抵抗に及ぼす影響を精査する。 (2)積層型固体電解質を用いた金属リチウムの溶解・析出特性の評価 (1)で構成した対称セルの直流通電試験を行い,積層型固体電解質上での金属リチウムの溶解・析出特性を評価する。温度(室温~100℃)と電流密度(0.1~1mA/cm2)をパラメータとして測定を行い,得られたセル電圧応答や試験後の固体電解質内および金属リチウムとの接合界面の微細組織観察に基づき,固体電解質の劣化メカニズム(特に固体電解質内に析出・伝播した樹脂状金属リチウムによる劣化)を考察する。比較のために,低密度層を形成していない固体電解質焼結体を用いた測定も同様に行い,金属リチウムとの接合界面への低密度固体電解質層の導入効果を考察する。
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