2019 Fiscal Year Annual Research Report
実規模機器に対するマルチフィジックス高速トポロジー最適化設計システムの創成
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19H02132
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
若尾 真治 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70257210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 吉史 法政大学, 理工学部, 教授 (40415112)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トポロジー最適化 / 電気機器設計 / 磁界解析 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)トポロジー最適化における深層学習の活用(主:若尾、副:岡本) 設計感度情報に基づくレベルセット法によるトポロジー最適化では、探索プロセスの高速化が期待できる一方で、得られる最適解の初期値依存性が問題となり、大域解を得るためには繰り返し最適化計算を行わなければならない。そこで、画像処理分野で有効性が認められている畳み込みニューラルネットワーク(CNN)と、従来法に比べ長期間の時系列データを扱えるLong Short-Term Memory(LSTM)を用いたEncoder-Decoderを構築し、レベルセット法による磁性体の形状最適化問題の解探索プロセスの学習とその復元を試み、開発手法の高い復元精度と計算時間の大幅な短縮化を実証した。また、条件付深層生成モデルであるConditional Variational Auto-Encoder(CVAE)の磁気回路設計への適用も試み、磁気回路の形状(画像)としての特徴と目的関数である磁気エネルギー値の二つの情報を適切に学習・統合させることに成功した。 (2)時間領域最適化問題の高速求解(主:岡本、副:若尾) 時間領域随伴変数法による定常状態における感度解析、ならびに、磁気特性測定装置の開発を実施した。随伴変数法による感度解析では、最終時刻ステップから初期時刻ステップの方向へ終端値問題を求解することで、過渡現象も含めた状態での感度が求められる。そこで、定常状態における感度を求めるため、初期時刻から過渡現象の終端まで初期値問題を解き、過渡現象の終端から初期時刻に対する随伴問題を求め、その感度を過渡状態・定常状態が含まれた感度から差し引くことで、定常状態のみを考慮した感度解析手法を提案した。また、磁気特性測定装置の開発においては、単板磁気試験器の基礎部分を構築し、電磁鋼鈑の磁気ヒステリシスループの測定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)トポロジー最適化における深層学習の活用(主:若尾、副:岡本)にて開発したEncoder-Decoderでは、基本的な磁気回路問題を例題として、5,000程度の種々の初期形状データに対してレベルセット法による最適化過程150ステップのデータを作成して学習データとして用いた結果、学習データとは異なる様々な検証用データに対しても、正確にレベルセット法の最適化過程を極めて短時間で推定可能であることを実証した。本開発手法により、目的関数に対する磁性体の様々な初期形状の優劣を高精度かつ高速に判定することができ、広範な探索空間に対して実用上許容可能な計算時間でより大域的かつ実用的なトポロジー形状の探索が可能となったことから、順調な滑りだしといえる。 (2)時間領域最適化問題の高速求解(主:岡本、副:若尾)における目標であった時間領域随伴変数法の高度化を達成し、さらに、磁気ヒステリシス特性を導入したトポロジー最適化手法の構築に向けた磁気特性装置(単板磁気試験器)のプロトタイプが完成したため、概ね、順調に進展しているといえる。時間領域随伴変数法の高度化に向けて、定常状態のみの情報で感度解析を行う手法開発が今後の課題であるが、定常状態における感度解析を実施できたこと、また本年度の予算で磁気特性測定のために必要な装置のほとんどを購入し、磁気ヒステリシスループの計測を開始できたため、ソフトウェア・ハードウェア双方の観点からも、順調な滑りだしといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として以下のものが考えられる。 (1)トポロジー最適化における深層学習の活用(主:若尾、副:岡本) トポロジー最適化プロセスのさらなる効率化を目指し、2019年度に開発した深層学習に基づく設計手法をさらに展開し、電気機器設計において、多数の目的関数の効率的な取扱い方法や、より複雑かつ微細な機器形状(設計変数)の表現法の確立を目指す。具体的には、磁気回路設計問題を対象として、最適化計算の探索過程で得られる解群を学習データとし、基準形状の画像データを起点として、複数の所望の連続的な目的関数値を有する磁気回路形状を出力する関数の構築を目指す。本手法は、画像を直接扱うことのできる新たな応答局面近似手法と位置付けることができ、基準形状の特徴を起点とした所望の目的関数値の連続的な変化に対応した磁気回路形状の変化を可視化できることとなり、これまでになかった設計情報として最適化設計の効率化に貢献できる可能性がある。 (2)時間領域最適化問題の高速求解および磁気ヒステリシス特性を考慮したトポロジー最適化(主:岡本、副:若尾) 電動機では、磁束密度が時間的に変動することで電磁鋼鈑内部に鉄損が発生するため、トポロジー最適化による効果的な鉄損抑制が求められている。そこで、時間的に変動する鉄損値に対する随伴変数法を礎とした感度解析手法の開発を実施する。ここで、時間領域随伴変数法の導入が必要となるが、過渡現象が長い問題に対して計算コストを抑える方策についても検討する。さらに、磁気ヒステリシス測定関連として、Bコイルで検出される磁束密度波形が正弦波となる波形制御法の検討を行うことで、磁気ヒステリシス特性を考慮したトポロジー最適化に必要なデータ測定の準備を行う予定である。
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