2020 Fiscal Year Annual Research Report
無線通信系におけるデータ駆動アルゴリズムデザインの新展開
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19H02138
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
和田山 正 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20275374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 和則 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50346102)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 深層展開 / 深層学習 / SCDMA方式 / 収束加速 / MIMO方式 / 固定点反復 / チェビシェフ多項式 / LDPC符号 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度において、特に注力したが深層展開に基づくスパースCDMA方式に関する研究とチェビシェフステップの応用として、周期的SOR加速に関する検討である。これらについて順にその概要を述べる。スパースCDMA方式は、疎な拡散系列に基づくCDMA方式であり、次世代無線通信において注目されているNOMAの一種である。われわれの研究では、深層展開を利用して 1) SCDMA検出器に含まれる内部パラメータの最適化、2) 拡散系列の設計を同時に行う手法を提案している。検出器の設計においては、前年度に本プロジェクトで実施した深層展開を利用したMIMO検出器に関する研究の成果が重要な役割を果たしている。提案により既存法と比較して少ない計算量で同等の検出性能を達成できることが実験的に示されている。また、拡散系列の設計に深層展開を利用する研究事例は他になく、高い新規性を持つ研究となった。次に周期的PSORに関する研究について述べる。前年度に深層展開された勾配法に関する観察に基づき、発見されたチェビシェフステップによる収束加速をより広いクラスの固定点反復に適用できるようにしたのがチェビシェフ周期的PSOR法である。この手法は、逐次加速法(Successive Over-Relaxation; SOR) の係数としてチェビシェフ多項式の根の逆数を利用する手法とみることができる。線形固定点反復、非線形固定点反復について、その収束を加速することができる。2020年度においては、非線形固定点反復の固定点における線形近似などの理論的検討と実験的検討を行った。実験的検討においては、例えば、連立1次方程式の反復解法であるヤコビ法の収束を高速化できることを示した。また、スパース信号再現アルゴリズムであるISTAの収束加速も可能であることが実験的に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進捗しているものと考えている。当初の実施計画では、スパースCDMAの研究については最終年度までかかるものと予定していたが、2020年度中に研究が完了し、論文投稿も終えることができた。その成果は、IEEE Access 誌(2021)に掲載された。また、チェビシェフPSORによる収束加速に関する研究では、理論・実験成果をまとめて投稿したIEEE Signal Processing Letters が2021年4月に採録された。一方、分散最適化の収束加速に関する研究は若干、出足が遅くなっているが2021年度の研究で予定どおりのペースに復帰できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においても「次に繋がる」研究成果を狙って、下記の新規研究について取り組む予定である。 1) 雑音や外乱を含む線形固定点反復式のPSOR加速について理論的・実験的にその声質を明らかにしたい。チェビシェフPSOR法は汎用的に利用が可能な収束加速手法であるが、系に対する外乱に弱いことが今までの研究から明らかになりつつある。そのため、外乱に対してロバスト性を有する加速手法への改良が大きな課題として認識されてきた。本年度は、その部分について特に注力して検討を進めていく予定である。 2) 分散最適化の例として、連合学習型の分散MIMO信号検出アルゴリズムの深層展開に基づく収束加速を検討する。MIMOネットワークにおいての分散型信号検出アルゴリズムは、今後の無線ネットワークにおいて重要性の高い技術である。本プロジェクトで培った深層展開技術の適用は、分散信号検出アルゴリズムの性能向上のために非常に自然なアプローチだと考えられる。 一方、最終年度の研究総括として未発表の研究成果を国際会議に発表するとともに、その論文化を積極的に進めて本プロジェクトの成果が形として残るように努めていきたいと考えている。
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Research Products
(8 results)