2019 Fiscal Year Annual Research Report
局所磁気特性制御技術及びその計測手法の確立と高機能薄膜磁気デバイスへの適用
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19H02147
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
菊池 弘昭 岩手大学, 理工学部, 准教授 (30344617)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 磁気異方性 / 磁性薄膜 / 局所制御 / 磁気デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はジュール加熱の基礎検討とレーザー加熱の可能性について検討し、下記の知見を得た。 (1)レーザー加熱は、薄膜の場合でも可能なことを大気中にて確認した。(2)ジュール加熱においては、磁気インピーダンス素子を用いて、ウェハープローブを利用して加熱を行い、磁気インピーダンス素子の変化について検討した。先行研究において、試料作製時に導入された応力緩和目的でリボンやワイヤに対してジュール加熱利用の報告はあったが、本研究での検討の結果、薄膜に対しては加熱のみによる特性改善は確認されなかった。一方、磁場を印加しながらの加熱では、インピーダンス特性に変化が確認され、磁気特性制御の可能性が示唆された。具体的には、磁気インピーダンス特性では磁気異方性の磁界強度付近でインピーダンスの最大値を示すが、この磁界強度が加熱後に低磁界側へシフトした。(3)破断には至らないが、ある程度大きな電流を印加すると、磁気インピーダンス特性が劇的に劣化することは確認した。その際、初期インピーダンスは大幅に低下した。ジュール加熱の際の正確な温度評価は行えなかったが、シミュレーションとの併用で、ジュール加熱により結晶化温度に達し、素子が結晶化したことによりインピーダンス特性に劣化が生じたことを明らかにした。(4)本年度は大気中で短時間での検討を主に行ったが、その場合、酸化による影響は顕著には現れなかった。(5)一方、長時間の加熱により酸化の問題は避けられないと判断するので、ジュール加熱及びレーザー加熱に対応できる、真空系の構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初計画において、検討項目はジュール加熱及びレーザー加熱の薄膜への適用性の確認と磁気特性制御の可能性の検討であったが、いずれも適用可及び磁気特性変化の確認ができたため。また、真空系の構築も完了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 構築した真空系とレーザー加熱及びジュール加熱系を組み合わせたシステムとしての動作確認及び磁性薄膜の最適熱処理条件の検討を行う。また、磁場印加時における最適磁石配置の検討を行い、最適な磁場中熱処理条件の探索を行う。 2.システムの改善 初年度に作製した装置において、より高度な温度制御を可能にするために、冷却用ガスや水冷機構を設けるなどシステムの改造について検討する。 3. 局所的磁気特性評価系の構築と制御技術の最適化 磁気異方性の方向だけでなく、強度を評価可能なように磁気光学的な手法を用いて測定系を構築する。具体的には光源(ただし、 加熱用のパワーが強いレーザーとは異なる)、偏光子・検光子、フォトディテクタにより磁気光学効果を利用して局所的な磁化曲線を得ることを検討する。また、マイクロストリップ線路を利用して局所的な透磁率計測の適用性について検討する。薄膜磁界センサや薄膜インダクタでは初透磁率が重要な評価パラメータとなる。この測定系を1,2. のシステムに組込み、磁気異方性変化の状況をモニタリングしながらの制御を可能にして磁気異方性の制御性向上に努め、最適な制御手法・条件を探索する。 当面、これらの磁場中熱処理の検討を行う際には、薄膜の円形試料及び、矩形状に微細加工した磁気インピーダンス素子にて評価を行う。3.の検討項目と並行して、既存のカー効果顕微鏡や磁気インピーダンス特性評価により、磁場中熱処理による磁気特性変化を評価する。
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