2019 Fiscal Year Annual Research Report
AIを導入したマテリアルズインフォマティクスによる巨大光吸収半導体の開発
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19H02167
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
藤原 裕之 岐阜大学, 工学部, 教授 (40344444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志賀 元紀 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20437263)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光吸収半導体 / データベース / 高存在元素 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、巨大光吸収を示す太陽電池用半導体物質をAIにより効率的に探索することを目的とし、AIに適用できるデータベースの構築を目指した。具体的には、地殻中に1000 ppm以上存在する高存在度元素により構成される結晶化合物に焦点を当てて材料探索を実行した。しかしこの場合には、データベースとして活用できる化合物数が少なく、350 ppmまで閾値を低下させて検討した。光学データベースの構築に際しては、まず汎用データベースにより初期スクリーニングを行い、目標元素だけで構成される化合物12万個の中から半導体材料であることおよび単位格子の原子数が20個以下であることを選定理由として72個の化合物を選択し、さらに、第一原理計算のバンドギャップ計算から、直接遷移型材料39個を選択した。太陽電池として適用可能なバンドギャップ領域であることを考慮すると材料は8個にまで低下する。上記のスクリーニングの結果から、既存材料に材料探索範囲を限定した場合には、太陽電池に利用可能な化合物が極めて少ないことが示された。 一方、第一原理計算により半導体材料の光吸収係数を非常に少ない計算コストで計算する手法(PHS法)を新たに開発することに成功した。この手法により高い光吸収係数を示す新しい材料(BaZrS3系:カルコゲナイドペロブスカイト)の計算を実施し、非常に高い精度で実験値を再現できることを確認した。 さらに、太陽電池候補材料の特性を予測するインフォマティクス手法を開発するために、 結晶構造データベースから約800件の結晶構造と関連する物性情報を取り出し、データを整備した。そして、組成、元素の基本情報、原子配置などを記述して、太陽電池に関わる物性を予測する問題に対して既存の機械学習法を行いて、予測性能をベンチマークした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
巨大光吸収係数を示す半導体をAIにより探索するためには、精度の高い学習データが必要となる。しかし、膨大な数の物質を含むデータベースより、教師データとなる半導体材料のスクリーニングを行ったところ、多くの材料が磁性的な性質を示し、半導体的性質を示す材料が極めて限られていることが新たに明らかとなった。また、既存材料のデータベースを適用して半導体の光学的性質(バンドギャップおよび光吸収係数)を第一原理計算により計算する場合、正確な評価にはハイブリッド汎関数を使用した厳密計算が必要であり、これには1材料当たりの計算時間が2~7日と非常に高い計算コストが示された。そのため、半導体材料を効率的に見つけ、さらに高スループットの計算を実施する必要があることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定では、地殻中に1000 ppm以上の高い濃度で存在する高存在度元素(Na, K, Mg, Ca, Si, O, P, S, F, Al, Ti, Fe, Mn, Ba, Sr)に焦点を当てて研究を行ったが、半導体の性質を示す材料が少なく、350 ppmまで閾値を低下させた。今後は、元素の存在比を100 ppmまで低下させ、より広範な元素について材料探索を行う。さらに、機械学習の教師データの蓄積に際し、現在は第一原理計算の計算時間が、最終的なボトルネックとなっている。今後は、より低い計算コストで、適度に正確なバンドギャップを計算できる方法について検討し、計算効率の大幅な向上に努める。さらに、AIについては、少ないデータでもある程度の精度が確保できる計算手法を検討する。
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Research Products
(3 results)