2019 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外/可視域における広帯域な迂回型光学迷彩の実現
Project/Area Number |
19H02193
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
雨宮 智宏 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80551275)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 光学迷彩 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度においては、近赤外・可視域へ向けたメタマテリアルフィルムを提案・設計するとともに、実際に作製を行い、300 THz (波長980 nm) においてその実証を行った。 中赤外帯域で用いてきたCリング型メタマテリアルでは、作製限界の問題から、そのままサイズの微小化を行っても、近赤外・可視域に到達することができない。そのため、近赤外・可視域(300 THz以上)において迷彩効果を得ることができるよう、新たなメタマテリアル構造を提案した(東工大 & TOYOTA自動車, 光学迷彩装置, 特願2019-197954)。 提案したメタマテリアルの構造は、2つの金属十字構造を積層した形となっており、1層目と2層目の十字の長さを変化させることで誘電率を、1層目と2層目の重なり方を制御することで透磁率を、それぞれ独立に制御できる。本構造においては、重なり面積で動作周波数が決定されるため、金属の大きさを一定レベルに維持したまま、近赤外・可視域で透磁率を変化させることが可能となる。 本研究では、フィルムの膜厚は1 μmとし、内包する2層十字構造の形状分布については、変換光学の理論に従って設定した。プロセスの詳細記述は冗長となるため省略する。できあがったフィルムを直径50 μm のタングステンワイヤーと共にスライドガラスに挟み、滑走させることで巻き取りを行った。その後、ポリイミドのガラス転移温度付近で真空アニールを行うことで素子を作製した。 金属パターン(東工大のロゴ)が形成されたガラス基板の上部に素子を配置し、顕微紫外可視近赤外分光によるイメージングを行った。本来は素子で光が散乱することでロゴが隠されるが、波長1020 nm(= 294 THz)において、メタマテリアルフィルムが光学迷彩として働くことで光の迂回が起こり、デバイス直下のパターンを観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、近赤外・可視域へ向けたメタマテリアルフィルムを提案するとともに、実際に作製・評価をとおして、近赤外光学迷彩の実証を行った。提案したフィルムに内包するメタマテリアル構造は、2つの金属十字を積層した形となっている。本構造においては、重なり面積で動作周波数が決定されるため、金属の大きさを一定レベルに維持したまま、近赤外・可視域で透磁率を変化させることが可能となる。実際に、直径50 μmのタングステンワイヤーに本フィルムを巻きつけたサンプルにおいて、紫外可視分光イメージングにより、300 THz近傍での迷彩効果の発現を観測することに成功した。 当初研究計画に対して順調に進んでいるが、年度ごとの研究実施内容を若干変更した。当初計画では、本年は「赤外での広帯域化」に注力することになっており、可視域の実証については最終年度に実施予定となっていた。しかし、もっとも実現の難しい可視域の実証に向けて、比較的早い段階で有効なメタマテリアルフィルムの構造を提案できたため、2019年度はその理論解析、試作と評価に取り組むように変更した。そのため広帯域化は最終年度に行う予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究成果を発展させる形で、最終年度の研究計画では、「広帯域化」を目標に定める。メタマテリアルの電磁気学的な特性(誘電率・透磁率の値)は、内部の微細構造を変化させることで様々に制御できるが、逆を言えば、一度構造を決めてしまうとその特性を変化させることが非常に難しい。特に周波数の依存性は顕著であり、対象周波数では所望の光学定数が得られるものの、その周波数を外れると通常の特性に戻ってしまう。そのため,従来の光学迷彩は単一周波数動作(±5 THz程度)が常であったが、実用を見据えた場合、動作周波数を広げることは至上命題となる。 広帯域で動作する可視・近赤外の光学迷彩の実現へ向けて,メタマテリアルフィルムの設計・作製と、その光学定数(誘電率・透磁率)の評価を行う。2019年度に提案した2層構造メタマテリアルを拡張する形で、メタマテリアル内に重なりを複数用意することにより、その組み合わせによって20 THz以上の広帯域化が可能となる。薄膜フィルム内に前述したメタマテリアルを分布させ、紫外可視分光での評価をとおしてフィルム自体の基礎データを集めることで、フィルムの物質定数(誘電率および透磁率)を決定する。その後、得られたデータをもとにして,フィルム内に適当な光学定数分布を実現する。最終的に、顕微紫外可視分光イメージングおよび位相干渉イメージングを行うことで、広帯域光学迷彩の実証を試みる予定である。
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[Journal Article] Enhanced bonding strength of InP/Si chip-on-wafer by plasma-activated bonding using stress-controlled interlayer2019
Author(s)
Takehiko Kikuchi, Liu Bai, Takuya Mitarai, Hideki Yagi, Masato Furukawa, Tomohiro Amemiya, Nobuhiko Nishiyama, Shigehisa AraiTakehiko Kikuchi, Liu Bai, Takuya Mitarai, Hideki Yagi, Masato Furukawa, Tomohiro Amemiya, Nobuhiko Nishiyama, Shigehisa Arai
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Journal Title
Japanese Journal of Applied Physics
Volume: 59
Pages: SBBD02
DOI
Peer Reviewed
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