2020 Fiscal Year Annual Research Report
C-S-Hの関与が疑われる硫酸塩劣化機構の解明とリスククライテリアの整理
Project/Area Number |
19H02208
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 慎太郎 東北大学, 工学研究科, 助教 (60709723)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
皆川 浩 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10431537)
斎藤 豪 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90452010)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | エトリンガイト / AFm相 / C-S-H / DEF / ソーマサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は大きく二つの研究を並行して実施した.一つ目の研究は遅れエトリンガイト生成(DEF)に起因する膨張劣化についてエトリンガイトがどの水和物の近傍において析出するかを明らかにする目的で実施した要素試験であり,二つ目は低温かつ硫酸塩が存在する環境において析出が懸念されるソーマサイトに着目した低温海水へのセメント硬化体の浸せき試験である. 一つ目の研究では,モノカーボネートとモノサルフェート,C-S-Hの単相をそれぞれ用いて硫酸塩溶液を作用させて,各水和物近傍におけるエトリンガイトの析出状況を観察した.その結果,モノカーボネートや C-S-Hについては大きな相組成の変化は認められず,モノサルフェートはエトリンガイトやソーマサイト,ヘミカーボネート,モノカーボネートに変化することがわかった.この結果は,モノサルフェートよりもエトリンガイトを初めとした二次鉱物の方が熱力学的に安定な鉱物であるためであると考えた. 二つ目の研究では,低温海水がコンクリートに作用すると膨張を伴う劣化が生じることがあるという報告を受けて,この劣化にソーマサイトが関与している可能性があると考えて,海水に含まれる硫酸マグネシウムと同濃度に調整した溶液をセメントペーストに作用させて化学反応経路を観察した.その結果,海水と異なり塩化ナトリウムが含まれない場合においては,海水と同濃度の硫酸マグネシウム溶液がセメントペーストに作用した場合においても通常では生じにくい膨張破壊が生じることが判明し,この劣化にはエトリンガイトの増加が強く関与していることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画ではC-S-Hの硫酸塩劣化への関与を明らかにするという目的に対して,要素試験を行った結果,C-S-H近傍においてエトリンガイト等の二次鉱物は析出しなかったものの,C-S-Hと同様にシリカを組成するソーマサイトの析出は確認できたことから,これらの鉱物の反応経路について推察することができたのがおおむね順調に進展していると判断した一つ目の理由である. 加えて,低温海水という特殊な環境において常温では生じないエトリンガイトの増加に伴う膨張破壊が生じることを明確にし,この点から各鉱物相の平衡定数の温度依存性などを再構築する必要がある可能性が示唆された点も研究が順調に進展していると判断した理由である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はまずC-S-Hやモノカーボネート,モノサルフェートの単相を用いた要素試験について,より長期的な試験を実施することで最終的な平衡状態に至るまでの反応経路を詳細に整理していくことを考えている. また,劣化に関与する鉱物相の平衡定数について現状ではその温度依存性を正確に表現できていないことが示唆されたため,この点を再構築するための研究を実施することも考えている. さらには,DEFやTSAについて実際のセメント硬化体を用いた実験を実施することで,上記の2つの要素試験で整理を目指しているメカニズムや平衡定数の温度依存性について信頼性を高めていくことを考えている.
|
Research Products
(3 results)