2021 Fiscal Year Annual Research Report
C-S-Hの関与が疑われる硫酸塩劣化機構の解明とリスククライテリアの整理
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19H02208
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮本 慎太郎 東北大学, 工学研究科, 助教 (60709723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
皆川 浩 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10431537)
斎藤 豪 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90452010)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | thaumasite / 多変量解析 / XRD/リートベルト法 / 熱力学的相平衡計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はC-S-Hと同様にシリケートイオンを組成するthaumasiteの生成条件に関する研究を中心に実施した.Thaumasiteの生成に起因して生じる劣化はTSA(Thaumasite formed of Sulfate Attack)と呼称されており,近年ではイギリスの高速道路の橋脚において大規模に発生し,活発な研究が行われ始めた.その結果,TSAは低温環境で生じやすいことやマグネシウムが存在する環境において生じやすいなどいくつかの発生条件が整理されたが,これらの条件とTSAの発生の間にはっきりした因果関係は見出されておらず,メカニズムの解明が非常に重要である. TSAのメカニズム解明の難しさの理由としてまずthaumasiteの検出が難しい点にある.Thaumasiteの結晶構造はettringiteと類似しており,特定の格子面におけるX線の回折角が漸近しているため,両者の区別は困難な場合が多い.これらを踏まえて本研究では,まずはthaumasiteの同定・定量技術の確立を目指し,これに加えてthaumasiteの生成条件等についての実験と数値シミュレーションを実施した. 研究実績としてまずはXRD/リートベルト法でettringiteとthaumasiteを分離することができ,さらには,この結果に加えてSEM/EDSによる多変量解析,FT-IRなどを組み合わせることで,より信頼性の高い形でthaumasiteを捉えることができ,さらには,どの劣化状態においてthaumasiteが生成し易いのかを捉えることが可能となった. 加えて,熱力学的相平衡計算においても実験で観察された劣化状態と同様の状態においてthaumasiteが生成され易いことを証明することができた. これらの結果はTSAの発生メカニズムの解明の一助になるものと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はTSAの発生メカニズムについて,実際のサンプルの劣化状況と熱力学的相平衡計算の両方からのアプローチによって,TSAが生じるまでの化学反応経路を概ね整理することができた.このような理由から本研究は現時点においておおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はthaumasiteに限らず,その他のセメント水和物の平衡定数の温度依存性についてより広い温度帯で再考していくことを考えている.現在取り組んでいるTSAとDEF(Delayed Ettringite Formation)という二つの劣化について,前者は低温環境で,後者は高温履歴を受けることで,それぞれ劣化が生じやすいという特徴を有している. しかしながら,熱力学的相平衡計算ではこれらの劣化現象を上手く表現できない部分が残されている.この理由について,現在公表されている平衡定数の温度依存性が必ずしも正確ではない可能性が考えられるため,この点について再考して,より正確な平衡定数を用いることで熱力学的相平衡計算の信頼性を高めていくことを考えている.
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