2020 Fiscal Year Annual Research Report
維持管理負担の軽減に向けたかぶり剥落要因の検証と雨水侵入による照査体系への転換
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19H02213
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40548575)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中性化 / かぶり / 腐食 / 雨かがり / 実構造物 / 水分移動 / 混和材 / 空隙構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1]かぶりの剥落に対する中性化・雨水侵入の影響度の把握: 構造物は、愛知県、名古屋市などで補修中の橋梁を対象とし、建設年と環境などの条件により選定を行った。調査では、雨掛かり・剥落の有無、かぶり深さ、中性化深さのデータを収集し、これらのデータをロジスティック回帰分析により、剥落に対する中性化・雨水侵入の影響を定量的に評価することに成功した。これにより、コンクリート標準示方書では、鉄筋腐食の照査における因子として、中性化と雨水侵入を同等に扱うことの、工学的根拠を示すことができた。中性化により構造物の耐久性が照査されることになった歴史的経緯と合わせて、論文としてまとめている。 [2]かぶりにおける雨水侵入のメカニズムと空隙構造に基づいた構成則: 実構造物かぶりから採取したコアを用いて、各かぶり厚さにおける湿度の経時変化、雨水侵入限界深さの情報を取得することに成功した。また、これらの水分移動性状を理解するために、水分移動場となる空隙構造の情報を、コアの深さ方向における空隙構造の変化として取得した。現行の示方書における鉄筋腐食予測式は、雨水が鉄筋位置に到達する頻度により、鉄筋腐食のリスクを判定している。照査の精度を上げるために、第一に、実構造物のかぶりコンクリートにおける、腐食因子の雨水侵入による輸送量・頻度の実態を把握することに成功した。またこの水分移動に対する、(b)骨材周りの遷移帯ならびに(c)混和材がつくるインクボトル空隙の構造と影響について実験データとして把握することができた。 [3]かぶりの雨水侵入抵抗性を評価する非破壊試験の提案: 混和材を用いたコンクリートにおける吸水・乾燥量と、連続空隙の各種空隙径に強い相関関係があることがわかった。実構造物では、吸水・乾燥する(雨水の出入りしやすい)空隙を定量化することで、雨水侵入抵抗性が評価できる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はコロナ禍の影響を受け、実構造物の補修現場における検証実験が減ったが、前年度に多くの調査を行っていたことで、必要なデータが揃い、申請課題におけるステップをおおむね順調に達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
[1]かぶりの剥落に対する中性化・雨水侵入の影響度の把握: 実構造物における調査を継続し、事例を充実させる。そして査読論文としてまとめる。 [2]かぶりにおける雨水侵入のメカニズムと空隙構造に基づいた構成則: 実構造物の調査事例において不足する情報を補うため、ラボにて作製した供試体を用いて、腐食物質の移動に及ぼすコンクリートの品質(水セメント比、養生)条件の影響を把握する。そして、統計解析により、降雨パターンと腐食物質の輸送量・深さの関係を検討する。降雨前のコンクリートの乾燥状態、降雨の強度や継続時間が、かぶり内部における雨水侵入深さに及ぼす影響を、鉄筋に雨水が到達するモデルに組み込む。そして、既往研究のデータも含めて、提案モデルの検証を行う。 [3]かぶりの雨水侵入抵抗性を評価する非破壊試験の提案: 空隙率を基に構成された従来手法では評価が難しい混和材の雨水侵入抵抗性には、独自分析手法で得る連続空隙の情報に基づき流体解析を行うことで、その侵入メカニズムを明らかにする。そして、本メカニズムに基づき提案した非破壊試験の有効性について実構造物を用いた検証を行う。
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