2021 Fiscal Year Annual Research Report
Drive-by Sensing for multiple vehicles and multiple bridges
Project/Area Number |
19H02220
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 亨輔 筑波大学, システム情報系, 助教 (80635392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 幸彦 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80432053)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 車両‐橋梁相互作用システム / システム同定 / 車両振動 / 橋梁振動 / 構造ヘルスモニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
Drive-by Monitoring技術の一つとして,VBISI(Vehicle-Bridge Interaction System Identification)法を提案し,理論実証を進展させることができた.VBISI法とは,計測された車両振動データおよびランダム仮定された力学パラメータ(車両と橋梁の質量,減衰,剛性)を車両と橋梁の運動方程式に代入し,前輪と後輪の路面凹凸を推定して両者が一致するまで,力学パラメータを更新し続ける方法である.これにより,車両振動データのみを用いて,車両と橋梁のシステム同定が実現できる.本理論は,数値計算によって可能であることを確認していたが,実環境での実験には至ってなかった.そこで,本年度では,車両と橋梁の同時振動計測実験を行った.ここでは,車両としてセンサを搭載した14tトラックを採用し,複数の橋梁で車両振動を計測するとともに,精度検証用のデータとして橋梁でも直接計測を行った.車両と橋梁の計測システムは,GPS時刻同期機能を備え,有線・無線いずれの通信も行うこと無く,時刻が正確に同期される. 橋梁通過時の車両振動データを,前後左右輪およびその直上の8点×3軸=27chで計測し,かつ,同時に計測された橋梁振動データが時刻同期した状態で収集された例は,世界的にも稀で価値が高い.また,約20橋でデータ収集を行っており,様々な橋梁において比較検証も可能である. 当初の研究計画では,複数車両・複数橋梁で計測を想定したのは,そのような条件こそが車両・橋梁パラメータの同定に必要だと考えたからであったが,一車両一橋梁のデータから同定が可能なVBISI法を見出したことで,Drive-by Monitoringの実現性が高まったと言える. 本研究の成果は,国内外の学会・論文雑誌にて発表を予定(一部,実績書作成時点で採択済み)している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,複数車両・複数橋梁のデータ統合を目的としたのは,これがパラメータ同定の必要条件であると考えたためであった.実際には,一車両一橋梁のデータによって,車両と橋梁のパラメータ同定理論(VBISI法)が構築できたことで,当初の研究目的は達成しており,複数車両・複数橋梁におけるデータ分析の必要性は無いと言える.
一方で,VBISI法は社会実装の段階では大きな技術的課題が予想される.先ず,エンジン振動を始めとした様々な外乱によって,パラメータ同定精度は低下すると懸念される.このような問題を解決する方法として,複数のデータを統計処理し,尤もらしい値を採用することが考えられる.よって,実用面では,複数車両・複数橋梁のデータ統合・分析に対する要請は高まったものと考える.しかしながら,数値計算の結果によると,複数のデータを統合する場合,目的関数の設計によってはむしろ精度が低下する現象が見られる.現状では,データを増やすほど精度は低下し,結果の信頼性が損なわれてしまうため,『精度向上を目的とした複数車両・複数橋梁のデータ統合・分析』はうまく行っていない. 以上,当初目的は達成し,さらに計測システムも開発できた一方で,新たな課題に対してはいくつかの技術的課題を残していることから,(2) おおむね順調に進展している,と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は本年度が最終年度であり,当初目的である『複数車両・複数橋梁のデータ統合・分析による車両・橋梁システム同定』を達成していることから,本手法に関する成果発表を行っていく.一方で,新たな課題である『精度向上を目的とした複数車両・複数橋梁のデータ統合・分析』についても理論的な検討を行い,次年度以降の基盤研究事業へと発展させていくことを考えたい. 先ず,目的関数の設計スキームを検証する.複数データ統合における精度低下要因として,目的関数が全ての走行ケースで推定された路面凹凸の平均に対して誤差を求めている点に起因すると考えられる.目的関数を全路面凹凸推定値の平均ではなく,前後輪の誤差が小さなもの(より尤もらしいもの)を優先的に選択するよう変更し,更新方向を「望ましい方向」へと誘導することや,平均処理以外での評価を考える. 次に,実環境実験で得られた車両振動データにVBISI法を適用し,車両・橋梁パラメータを推定し,車両カタログスペックや橋梁振動データとの比較により,精度を考察する.この検討では,特に数値計算では正確に考慮できない外乱の影響を評価し,VBISI法で用いるモデルの改良や必要な事前情報の精度を明らかにし,本技術の実用化基盤研究に必要な基礎情報を提供する.
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Research Products
(9 results)