2020 Fiscal Year Annual Research Report
The mechanisms of submarine slope failures due to earthquakes and the resulting turbidity currents
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19H02242
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
泉 典洋 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10260530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 要一 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (00371758)
渡部 靖憲 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20292055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地震 / 海底地すべり / 混濁流 / 液状化 / 津波 / サイクリックステップ |
Outline of Annual Research Achievements |
地震等によって発生する海底地すべりのプロセスを再現する水槽実験を行った.実験では,海底斜面を模して砂で覆った斜面を水槽中で振動させた.実験によって,斜面崩壊が発生する勾配は現地で観察される斜面勾配よりかなり大きくなることが明らかとなった.これは,実験のスケールが現地のスケールより圧倒的に小さいことで発生するスケールエフェクトによるものか,あるいは現地では液状化に伴う急速な混濁流化が発生した可能性が考えられる.また斜面崩壊は,粒径が小さい砂で構成された斜面より粒径が小さい砂で構成された斜面の方が起きやすいことが明らかとなった.これらの原因については未だ解明できていない.これらの解明が今年度の課題の一つである. 海底で発生する地震による地盤の液状化について検討するために,陸上で発生した液状化について調査を行った.盛土に使われた火山灰質砂の液状化抵抗について締固め条件に着目して検討した.その結果,札幌市清田区里塚地区の火山灰質砂は,締固め度が90%以上まで締め固めれば高い液状化強度を期待できる盛土材量であるが,緩詰め状態だと液状化強度が低く,かつ,急激な液状化に至る傾向が見られた. 海底地すべりパラメータの経験モデルを提案すると同時に,海底地すべり津波が発電所に大きな影響を及ぼすエリアを特定し,三次元地盤安定解析と2層流モデルによる詳細な津波評価を行うことによって効率的な海底地すべり津波の将来想定を行う手法を提案した. 混濁流によって比較的勾配の大きい斜面上に発生する海底地形の一つにサイクリックステップがある.ほぼ平衡状態に達し長距離を移動する混濁流を仮定し,上層の低濃度層との連行は無視することで,高濃度層によるサイクリックステップの形成理論を構築した.混濁流の平衡層厚を導く従来の理論を適用したところ,予測されるステップの波長は実際のものとある程度の一致を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度,滞っていた海底地すべりの再現実験も昨年度終了し,斜面上の砂の粒径が大きい方が小さい方より海底地すべりを起こしやすいという主要な結果が得られた.また,実際に海底地すべりが発生するよりもかなり大きい斜面勾配にならなければ地すべりは生じないことが明らかとなった.これは現地と実験の間のスケールエフェクトである可能性もあるが,液状化に伴う混濁流化による可能性もある.それらに対する解釈は未だ完全にはできていないが,今年度,解析および数値シミュレーションを用いて明らかにする予定である. 平成30年の北海道胆振東部地震で発生した札幌市清田区の里塚地区で発生した陸上での液状化の発生プロセスに関する調査研究から,その主要な発生条件が明らかとなった.その結果から,水中における液状化の発生プロセスについて検討するための基礎的情報が得られた. 海底地すべりによる津波の将来想定手法の提案を行った.実際の原子力発電所周辺を想定し,海底の地形情報に基づいて発生し得る海底地すべり形状を推定した.地すべり形状から,新たに提案した海底地すべりパラメータを用いて,それによる津波の初期水位を推定した.その結果を初期条件として津波の数値シミュレーションを行い,発電所までの津波の増幅特性や発電所への影響度を評価した. 混濁流によって形成される海底地形の一つである,サイクリックステップの形成機構を表現する解析モデルを提案した.モデルによって得られたステップの波長は数百メートルから数キロメートルとなり,実際に海底で観測されるステップの波長をほぼ再現できることが明らかとなった.また,ステップの波長や波高など混濁流によって形成される海底地形のスケールを決定するために必要となる混濁流の平衡層厚を求める新たな理論を構築した.密度成層の影響を加味した理論によって,混濁流の平衡層厚を高精度に見積もることができるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
海底地すべりの再現実験の中では次の二つの主要な結果が得られた.一つは,粒径の大きい砂で覆われた斜面の方が粒径の小さい場合より地震による海底地すべりを起こしやすいことであり,もう一つは,実験で得られた地すべり発生時の斜面勾配が現地で地すべりを発生させるといわれている斜面勾配よりかなり大きくなることである.今年度は,これらの理由を,これまで土砂水理学で行われてきた,粒子に働く力の釣り合いを考慮した解析および数値シミュレーションによって明らかにする. 昨年度明らかにした,陸上での液状化のプロセスやその条件を基に,海底における液状化のプロセスやその条件を明らかにする.その条件が明らかになれば,実験で観察された,地すべりの発生する斜面角や粒径に関する結果にも重要な知見が得られる.解析結果の検証にもなることが期待できる. これらの成果に基づいて,斜面の形状から地すべり形状をより精度よく予測できる,地すべりパラメータの経験モデルを改良する.実際に海底地すべり津波を発生させた場所や原子力発電所周辺を想定海域として,改良した地すべりパラメータモデルを用いて海底地すべり形状を推定し,その結果を初期条件とした津波の数値シミュレーションを行うことによって,発生する海底地すべり津波の規模を予測する.予測された規模は,実測された津波と比較検証されるとともに,重要施設である原子力発電所のリスク評価に役立てる. 海底混濁流の平衡層厚を求める理論を,密度成層の影響をより適切に加えることによって改良し,より精度の良い平衡層厚を求める解析モデルを構築する.このモデルを様々な海底地形の形成理論に適用することで,これまで絶対的なスケールがよく分かっていなかったサイクリックステップや海底河川,海底扇状地などのスケールをより適切に説明できるようにする.
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