2019 Fiscal Year Annual Research Report
自動運転に向けた四輪車対自転車事故の統合安全に関する研究
Project/Area Number |
19H02259
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水野 幸治 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (80335075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 宏文 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任教授 (20713093)
一杉 正仁 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90328352)
伊藤 大輔 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90432244)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 交通安全 / 統合安全 / 自転車事故 / ドライバ応答 / 衝突被害軽減ブレーキ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではドライブレコーダをもとに四輪車対自転車事故の発生要因を分析した.出会い頭事故が最も多いことから,この事故形態の分析を行った.映像から自転車乗員の位置や速度を求める方法を確立した. 出会い頭事故では道路幅員が狭く,住宅等の建物が視界遮蔽物になっている無信号交差点で発生する場合が多い.四輪車自転車が見える時の衝突余裕時間TTCについて調べると,出会い頭の事故では2種類の類型が存在した.一つは,ドライバが自転車に気付くのが遅れ,ブレーキ反応も遅れたことによる事故であり,もう一つは,自転車の飛び出し事故である.四輪車が制動を開始した時点において,停止までに0.55G以上の減速度を必要とする領域に自転車乗員が入るかどうかで事故とヒヤリハットが区別される. ドライビングシミュレータによる被験者実験を行い,ドライブレコーダから確認された事故を再現した.TTCが大きなシナリオでは,被験者のブレーキ反応時間が衝突回避に大きな影響を及ぼす.TTCが小さなシナリオは被験者のブレーキ反応時間,TTC等が全て満たされたときに衝突回避が可能であった. ドライブレコーダ映像から事故再現を行い,さらに,衝突被害軽減ブレーキAEBを装備したときのシミュレーションをAEBのパラメータを変えて実施した.運転者の制動遅れに起因する出会い頭事故ではセンサー視野角FOVの拡大が有効であった.一方,自転車の飛び出しに起因するTTCが小さい出会い頭事故ではAEBによる衝突回避が困難であった. 衝突時の自転車乗員の挙動について有限要素解析を行った.フロントピラーと頭部が衝突するとヘルメットを着用していても,頭蓋骨と脳実質には大きなひずみが発生し,重篤な傷害が予測された.衝突から路面落下までの挙動を明確にするために,車体から加わる力積および力積モーメントを用いて,人体の速度と回転を予測できることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではドライブレコーダによる四輪車自転車事故の事故映像を用いて,事故の発生要因を明確にし,その対策方法を提示することを目的とする.本研究の研究項目と進捗状況は下記のとおりである. 1. 自転車乗員との衝突に至るパラメータを抽出するとともにその閾値を求める.さらに,衝突被害軽減ブレーキによる衝突防止効果を検討する.現在,出会い頭事故についてはほぼ研究を終了し,ヒヤリハットと事故を分ける因子,および事故の発生要因が明確となっている.さらに,次年度の予定であった右左折事故に取り組み始めている. 2. ドライビングシミュレータによって実事故を再現して,ドライバ反応の分析を行い,事故の発生要因を運転者の行動の面から明確化する.今年度の目標であった出会い頭の自転車飛び出しにについては,ドライバ反応の概要が求められた.この反応が,ドライブレコーダによる事故でのドライバ応答とも一致していることを見出すなど,当初の予定を超える成果が得られた. 3. 衝突時の自転車乗員の被害軽減のため,マルチボディおよび有限要素モデルを作成し,自転車乗員の挙動と頭部保護方法を検討する.これまでに,有限要素モデルから自転車乗員が衝突時に受ける衝撃と傷害の予測が可能となった.本年度の目標としていた直接の傷害リスクの評価に加えて,路面による傷害を検討するめどがたつなど,予想を超える進展があった.. 以上のように,現在,研究計画を超える進捗が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
ドライブレコーダによる四輪車自転車事故の事故映像による事故の発生要因の明確化,その対策方法の提示をさらに進めるため,つぎの研究項目を下記の手順で進めていく. 1. 出会い頭事故に加えて,事故発生頻度の高い右左折事故について,自転車乗員との衝突に至るパラメータを抽出するとともにその閾値を求める.右左折事故については,ドライバと自転車乗員の予測の誤り,「Looked-but-failed-to-see」などの問題が関与している可能性があり,ドライバと自転車乗員の顔映像を見ながら事故発生要因の統計分析を進める.さらに,右左折事故では衝突被害軽減ブレーキに加えて,ドライバウォーニングよる衝突防止効果を検討する. 2. ドライビングシミュレータによる実事故を再現によるドライバ反応の分析をさらに進める.昨年の実験結果の統計分析から,年齢が高いほど,慎重な運転を行うために事故が起きにくいという結果が得られている.さらに後期高齢者も含めた実験を行い,年齢とドライバ反応の関係につて研究を進める.また,右左折についてもドライビングシミュレータ実験を試みる. 3. 四輪車衝突時の自転車乗員の被害軽減のため,これまでに,作成したマルチボディおよび有限要素モデルによる計算を進め,自転車乗員が四輪車と衝突して以降,路面に衝突するまでの一連の過程での傷害防止対策を検討する.特に,現在,対策が困難とされている路面衝突について,挙動のコントロール方法を検討する. 4. 自転車衝突における四輪車ドライバへのウォーニング,衝突被害軽減ブレーキ,自転車乗員のヘルメット着用,衝突時の自転車乗員の挙動コントロールを組み合わせた,「統合安全」の効果の見積もり方法について検討する.
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Research Products
(4 results)