2020 Fiscal Year Annual Research Report
自動運転に向けた四輪車対自転車事故の統合安全に関する研究
Project/Area Number |
19H02259
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水野 幸治 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (80335075)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 宏文 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任教授 (20713093)
一杉 正仁 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90328352)
伊藤 大輔 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90432244)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 運転支援 / 統合安全 / 自転車 / ヒヤリハット / 出会い頭事故 |
Outline of Annual Research Achievements |
四輪車対自転車の出会い頭事故をドライブレコーダとドライビングシミュレータにより検討した.出会い頭事故の発生には,ドライバのブレーキ反応時間が大きな影響を及ぼす.衝突確率を物理モデルによって表現した.これは,衝突余裕時間によって衝突の有無を表すものである.このモデルによって,自転車が視認可能になった時刻での,衝突回避のための許容されるブレーキ反応時間を知ることができる. 2022年度には2020年度に未実施の分として,高齢ドライバによるドライビングシミュレータ実験を行った.実験には2021年度より開始した視線計測も含めた.ドライバは主として自分の車線の遠点(将来の到達点)を見ていた.自転車が最初に現れた点と視線のなす角が大きくなるほど,ブレーキ反応時間が大きくなる関係が示された.高齢者については自転車の認知が遅れることが多かったが,認知後の応答時間は非高齢者との有意な違いは見られなかった. ドライブレコーダから自転車乗員の行動を調べると,衝突余裕時間が短く,自転車の速度が遅いほど,自転車乗員は回避行動を行っていた.およそ20%は自転車乗員の回避がなければ衝突が発生していた. 以上より,四輪車と自転車の衝突要因を示すことができた.また,自転車乗員も回避行動とヘルメット着用が事故回避・傷害防止に非常に有効であることが示された.これらの研究結果について,高齢者の被験者実験を含めて,2022年度に英語論文4件,日本語解説論文1件の発表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドライブレコーダによって,交差点での自転車飛び出し事故におけるドライバ応答を調べた.さらに,ドライビングシミュレータで自転車飛び出し事故を再現し,ドライバ応答を計測した.ドライブレコーダ映像とドライビングシミュレータ実験では,事故時のドライバ応答の種類や割合がほぼ一致した.衝突余裕時間が短くなるほど,ドライバはブレーキよりも操舵を行うようになることが分かった.また,事故発生は衝突余裕時間とドライバ応答時間によって記述できることを示し,事故発生の基礎となる考え方として確立した. 自転車乗員の緊急時の応答についてもドライブコーダのヒヤリハット映像から調べた.自転車乗員はブレーキのほかに,操舵で回避している例が多々見られ,自転車乗員の回避がなければ,事故が発生していたと推測されたものがおよそ1/3見受けられた. このように研究はおおむね順調に推移したが,2021年度はコロナの影響で高齢者の被験者を集めることができず,予定していた年齢による影響を調べるドライビングシミュレータ実験を実施することができなかった.2022年度はこの実験を行い,その結果,高齢者被験者と非高齢被験者によって,自転車の交差点飛び出し事故に対するドライバの視線,運転応答について,高齢者の応答の特徴を明確にした.
|
Strategy for Future Research Activity |
四輪車と自転車の出会い頭事故発生モデルとして,衝突余裕時間に基づく物理モデルを提案したが,さらに,事故発生確率や機械学習など統計的なモデルについても構築していく.これらのモデルは相互に補完し,事故発生要因や機序を多角的に明らかにするものと期待される. ドライビングシミュレータでは,ドライバの応答をさらに調べる.ドライバのブレーキ反応時間に多大な影響を及ぼすドライバの視線を計測し,分析を行っていく.これによって,事故の発生要因につながる視線のスキャン方法と,自転車が飛び出した時の視線位置を調べ,事故要因の解明,対策に大きく寄与するものと思われる.また,様々な被験者について実験を行い,個人差についても解明していく. コロナの影響で1年の研究の延長をしていたが,2022年度に実験を完了し,研究を終了した.ドライバの応答について,多くの知見が得られ,3種類の四輪車と自転車の事故発生モデルを構築することができた.
|
Research Products
(4 results)