2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of simulation system for evaluating diversified urban activity and transportation
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19H02260
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三輪 富生 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (60422763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 高行 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30166392)
山本 俊行 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (80273465)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 都市交通計画 / 交通行動分析 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
居住地選択行動の分析については,新規交通サービスの提供による地域住民の居住地選択行動の分析を行った.同時期に開通した名古屋市営地下鉄名城線東側区間と名古屋臨海高速鉄道あおなみ線を対象に,過去の中京都市圏パーソントリップ調査データを用いて開通前後での居住地分布の変化をDIDモデルによって分析した.対象とした2路線のうち,あおなみ線は港湾地区に近く貨物倉庫が多く立ち並ぶ地域が再開発されたことから,居住者属性の変化が大きく平均世帯所得の上昇が予想され,一方,文教地区が多く以前より世帯所得が高い地域を通過する名城線では,それほど顕著な変化は生じていないと予想された.しかしながら,分析結果から,あおなみ線では新規路線開通に起因した世帯属性の大幅な変化は見られなかったが,名城線では世帯所得の上昇が確認された. また,自動運転車が普及した社会の交通需要量や交通手段分担率を予測するための統合型均衡配分モデルを構築した.この際,中京都市圏パーソントリップ調査データをWebアンケート調査データを用いて,自動運転タクシーサービスの選択モデルを構築している.また,自動運転車専用レーンの設置効果についても分析し,都市高速道路やその周辺の幹線道路で混雑の影響が大きいことが確認された. さらに,自動運転車が混入する交通流を扱うことが可能な交通流シミュレータを構築した.交差点における交通流の合流が協調的制御によって処理できる将来を目指し,制御方法の検討を行った.ここでは,各車両の移動軌跡が交差しない車両群を交差点に同時に流入させる順序を決定する方法を提案し,自動運転車の普及レベルを変えながらその効果を分析した.この結果から,自動運転車の普及レベルが高まるほど,混雑した状況でも協調制御の効果が発揮されることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンケート調査の収集と分析が想定より遅れた.このため,アンケート調査データの分析が十分ではなかった.この項目については,2020年度に引き続き実施する. ただし,それ以外の項目では十分な進捗が得られた.特に,2019年度に構築を開始したシミュレータや均衡配分システムは分析に必要な機能が完成し,将来の交通サービスが普及した場合の交通状況を予測し,適切な交通計画施策の検討を行える状況にあり,またその初期の分析を報告し出版ができている. また,将来の交通計画においては,従来のようなアンケート調査データによる交通需要予測が行われるとは考えにくく,GPS軌跡などの移動体データを直接用いたオンライン解析が主流になると考えることができる.このため,これまでの移動体データの分析手法について,包括的なレビューを行い,それをまとめることでレビュー論文を出版した.これは,当初予定していなかった研究項目であり,これまでの2年間の研究を通して,その必要性を認識したものである.このように,将来の都市交通研究やその制御を想定したうえで研究の方向性を部分的に見直したことで,以降の研究実施において,より学術的にインパクトの高い研究成果を得ることが可能となったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,2020年度に十分に進捗を得ることができなかったアンケート調査データの分析を行い,将来の交通計画や交通需要予測におけるあるべき姿を示す必要がある.このため,テレワークがどの程度普及するのか,そしてテレワーク時の交通行動分析や居住地変更等について分析を行う.そのうえで,将来の交通需要を予測する方法論を検討する. 居住地選択行動の分析においては,2020年度の分析では対象とした各路線の沿線で一定の影響を仮定していたが,過去の都市開発状況などの地域特性を考慮することが必要である.このため,各路線沿線をいくつかの地域に分割し,かつ地域内ゾーン間の相互影響を考慮した分析を行う予定である.さらに,アンケート調査データを活用し,自動運転車の普及が交通行動や居住地選択行動に与える影響を分析する予定である. 交通均衡モデルの構築においては,2020年度のモデルでは自動運転車と手動運転車の交通混雑への非対称性を表現できていない.このため,これらが混在する交通流をより精緻に表現できる交通量配分モデルを構築する.さらに,交通シミュレータの開発においては,車両間の協調制御方法を機械学習モデルによって決定することの効果を分析する. 最後に,移動体データによる交通計画の可能性を評価するために,タクシープローブデータを使い,交通需要の地域間比較を行うことで,従来の交通データでは得られない知見を得ることを目指す.
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Research Products
(4 results)