2019 Fiscal Year Annual Research Report
分子レベル有機錯体解析に基づく流域での溶存鉄の起源・輸送機構解明
Project/Area Number |
19H02271
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 学 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任准教授 (30598503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
權 垠相 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10360538)
菊地 哲郎 茨城県霞ケ浦環境科学センター(湖沼環境研究室、大気・化学物質研究室), 湖沼環境研究室, 技師 (50453965)
伊藤 紘晃 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 助教 (80637182)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 溶存有機物 / 鉄 / 沿岸域 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物生産性の高い沿岸域を維持する上で、陸域から供給される溶存鉄は重要な役割を担っている。溶存鉄の多くは腐植物質などの有機物に結合し、下流沿岸域まで輸送されると考えられているが、その起源や輸送機構の多くは未解明であり、陸域由来溶存鉄が沿岸域での生物生産に及ぼす影響についての科学的知見は極めて限定的である。本研究では、有機鉄錯体の分子組成や配位構造を1分子レベルで精密に調べ上げ、沿岸域における有機鉄の起源や流域での鉄輸送メカニズムに関して世界を牽引する先端的な知見を創出する。研究初年度では、有機物動態に関する野外調査を実施し、水・土壌試料採取と水質測定(pH、イオン強度、溶存酸素、水温、各種微量金属濃度、溶存有機炭素など)を行った。微量金属濃度の測定については、キレート樹脂に濃縮した後、ICP-MS法にて測定を行った。また、水・土壌試料からは、固相抽出法により有機物を精製・抽出した。抽出した一部の有機物サンプルについては、FT-ICR MS分析をESIネガティブモードにて、1ppmレベルの超高精度で分析した。そして、有機化合物内の各元素は12Cに対する相対質量で表される特徴を利用した化合物同定アルゴリズムにより有機の分子組成を明らかにした。加えて、抽出有機物試料に同位体標識した鉄溶液を添加し、pHを中性に調整した試料についてもFT-ICR MS分析を行った。有機物サンプルについては分子組成の空間的傾向が明らかとなり、森林や土壌由来の有機物は主としてCHOの元素組成から構成され、排水や沿岸域で採取された有機物はCHONSなどで構成されヘテロ原子を多く含むことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度では、野外調査を通して採取した水や土壌試料について、分離精製したのちに、一部のサンプルについて質量分析を環境させることを主目的とし、加えて、種々の水質パラメータも同時に計測する予定となっていた。その結果、対象となる流域において有機物の分子組成について、沿岸域でヘテロ原子が増加するなどの空間的傾向が明らかとなった。従って、研究初年度の研究計画である有機物の抽出や質量分析を達成しており、おおむね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究では、当初の研究計画通り、初年度に採取した土壌・水試料中の有機物を対象にさらに質量分析を行うことで時空間的な解像度を上げるとともに、鉄添加系における分析と解析を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)