2019 Fiscal Year Annual Research Report
Soil remediation using halophytes and halophilic methane fermentation system for salinised area in Central Asia
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19H02278
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
安井 英斉 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (70515329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 良輔 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (10409146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 気候変動 / 乾燥農業 / 塩害 / 土壌修復 / 好塩植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、気候変動や不適切な灌漑によって世界で毎年600万 ha(九州と四国の面積に相当)もの塩害化が進んでいるアジア・アフリカ内陸部の乾燥地土壌を生物学的に修復できるシステムの提供にある。具体的には、土壌塩類を好んで蓄積する植物(好塩性植物, ハロファイト)を嫌気バイオリアクタによってバイオマスを分解することで塩を高濃度で分離回収するとともに、同時にバイオマス有機分のほぼ全量をメタンとして抽出・ガス資源化ができるバイオリアクタを開発する。また、対象の土壌で塩類吸収を最大化させるための好塩性植物の種・培養条件を実験的に把握し、ハロファイトによる塩害土壌修復手法を体系化する。これは、ハロファイトバイオマスの嫌気的分解を司る耐塩性微生物の集積と、現地で収集されたハロファイトの増殖・嫌気分解処理の研究要素から成り立ち、塩害で荒廃した土壌の修復によって乾燥地帯の生態系と農業生産の回復を目指す。 塩害修復の研究フィールドとして、塩害が典型的なウズベキスタンのカラカルパクスタン自治共和国の農地を選定し、現地でのハロファイト試験栽培とともに野生ハロファイトの組成分析を実施する。これらの調査・分析にウズベキスタン国立大学の植物生態研究者を招き、体系的に研究を実施する。ハロファイトの研究は乾燥地における生態的な知見に留まっており、意図的な栽培やそれに伴う土壌からの塩類除去効果を工学的に調べられていないので、本研究によってハロファイトの積極利用による塩害土壌修復の戦略を定量的に評価できるはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウズベキスタンのカラカルパクスタン自治共和国において指導的な立場である農業研究所の協力により、現地で好塩植物の試験圃場を作成し、Suaeda salsa, Climacoptera brachiata, Kochia scoparia, Atriplex nitens, Salsola scleranthaの5種の育成を試みている。また、2回の現地調査によって当地に自生しているハロファイトを採取し、日本に輸出することができた。これは、ハロファイトに対する環境影響を把握するために物理環境を一定に保った人工気象室による栽培試験を検討したものである。塩生植物のClimacoptera brachiataおよびClimacoptera aralensisの種子をバーミキュライトを満たしたセルトレイ(セルのサイズは2cm四方)にそれぞれ30粒を播種し、気温20℃、相対湿度70%、光合成有効光量子束密度200 micro mol/m2/s、明暗周期16h/8hに設定した人工気象室に設置した。この環境においていずれの種子も発芽しなかったことから、この2種類のハロファイトを栽培するためには春化処理が必須となることが明らかになった。この栽培試験と平行して、現地で採取した32種のハロファイトについて、灰分含有率と陽イオンの組成を網羅的に分析した。現在、これらのハロファイトの有機成分 (リグニン, 炭水化物等)を分析中である。これらをもとにメタン発酵試験に供する植物バイオマスの組成を決定し、次年度に各種の嫌気分解実験を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
嫌気分解実験(メタン発酵)には、有効容積4L程度の市販ジャーファメンタを用い、好塩植物バイオマスの保有塩類を模擬した人工試料を原料として供給する。接種の嫌気微生物(下水処理場の嫌気性消化汚泥)は塩の耐性が限られていると予想されるため、連続実験においては原料の塩濃度を段階的に増加させる操作をおこなう。これによって、接種の微生物に含まれる耐塩性の群集を緩やかに集積できると考えている。また、植物バイオマスの生物分解反応は可溶化、酸生成、メタン生成といった逐次的な段階で構成されるため、各段階の律速因子を把握することは高速プロセスの開発に必須となる。このことを検討するために、各段階の反応を司る微生物反応に着目した各種の実験をおこなう。 ウズベキスタンのカラカルパクスタン自治共和国に設置した圃場では、一定の発芽が確認されたため、散水や施肥によるバイオマスの成長促進と塩類の取り込み速度の定量評価を今年度に実施する予定である。
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