2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on performance evaluation of reinforced concrete frame structure with spandrel and/or hanging walls having structural gaps at both ends of beam
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19H02283
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
田才 晃 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (40155057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 訓祥 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60758233)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート造建物 / 梁 / 腰壁 / 垂れ壁 / 構造スリット / せん断破壊 / せん断余裕度 / 端部補強 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄筋コンクリート造建物の腰壁または垂れ壁を有する梁では、端部において柱に影響を及ぼさないようにスリットを設ける場合が多く、曲げ降伏後に補強筋の破断を伴うせん断破壊を生じ、梁の靱性能が低下する現象が明らかになっている。本研究は、このような梁部材のせん断破壊時のメカニズムをより明確化してせん断設計手法へと展開すること、およびスリットを有する腰壁・垂れ壁付き梁と柱からなる接合部架構に対する壁の影響を明確化することを目的としている。第1年度(2019年度)は、研究計画に従って、せん断補強量と配筋範囲を主な変動因子として、梁試験体の静的載荷実験を行い、腰壁(垂れ壁)が付いた梁単体のせん断性能を検証した。 縮尺約1/2の梁試験体4体を作製した。このうち1体は壁の無い矩形断面梁のみとし、他の3体は梁の片側に同一諸元の壁を取付けた。いずれの壁も両端部の柱形との間に構造スリットを設けた。すべての試験体はせん断破壊を生じるよう設計した。壁付き試験体のうち2体は、梁端部の梁せいとほぼ同等長さの領域のせん断補強量を2水準で増量した。これらの試験体に地震力を模擬した載荷実験を行い、梁せん断力、部材変形、曲げおよびせん断変形成分、各鉄筋のひずみ等のデータを収集した。得られた実験結果を分析した結果、主に以下の新しい知見を得た。 1)せん断余裕度が1.0を下回るように計画した試験体は、主筋が降伏するよりも先にせん断補強筋が降伏し、せん断破壊に至った。2) 構造スリットを有した片側に壁が付くことで、矩形断面梁と破壊状況が変化し、壁と反対側の損傷が激しくなったが、せん断強度は低下しなかった。3) 梁端部の補強筋量を増すことで最大耐力が上昇するとともに、せん断変形を抑制することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来スリットを設けることは、架構全体の耐震性を向上するための有効な手法と考えられており、各種耐震設計基準において、腰壁や垂れ壁の梁への悪影響は指摘されていない。これまで行われてこなかった、破壊メカニズム解明のため、あるいは補強方法の検証のための実験は、本研究の中心にあって極めて独自性の強い検討項目である。研究協力者らの既往研究において靭性能の向上に効果があったのは、ヒンジ領域の補強筋の増量とスラブの存在である。この点をさらに発展させ、特に補強量と補強範囲の明確化は本研究独自の検討項目である。 第1年度(2019年度)に実施した片側壁付梁の載荷実験では、載荷中に予期せぬ異常な事象は発生せず、加力およびデータの収集はすべての試験体について、良好に終了することができた。その結果、過去の研究では例のない主筋が降伏するよりも先にせん断補強筋が降伏し、せん断破壊に至る現象を捕捉することができた。さらに、せん断補強量が同じであっても、壁が取付くか否かにより、せん断破壊の様相が大きく異なること、梁せいとほぼ同等長さの領域のせん断補強量により、せん断耐力とせん断変形量を制御可能であることが明確に示された。このような実験結果は、非常に貴重なものであり、今後収集されたデータを丹念に多角的に検討し、FEM解析も援用して、耐震設計法の精緻化に資するアウトプットを追求する道が開かれたと考えている。 なお、第1年度の研究成果は、2020年度日本建築学会大会学術講演梗概集に投稿を完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
第1年度の研究がおおむね順調に進展したことから、第2年度は当初計画に従って研究を進めていく。 すなわち、十字型接合部試験体の静的載荷実験を行う。柱梁曲げ強度比を等しくしてスリットを有する腰壁(垂れ壁)の有無を変動した試験体により接合部架構の破壊性状を把握する。また、第1年度の実験を分析した結果を踏まえ、接合部架構においても梁単体の場合と同様のせん断性状を有し、補強筋の増量により靭性能が向上することを検証する。第2年度の実験は、柱梁接合部を中心として、構造物から梁と柱をそれぞれ地震時応力状態の反曲点位置で切り出した十字型形状の試験体とする。鉛直ジャッキにより柱軸力を制御し、水平ジャッキによる地震時の変形を想定した正負交番繰り返し載荷を行う。また、部材実験を再現する非線形FEM解析を行う。さらに、影響因子を変動させた解析により、補強効果や、部材や十字架構に対する腰壁・垂れ壁の大きさ(厚さや高さ)の影響程度などを検討する。これにより、実験結果とあわせて破壊メカニズムを考察し、応力の集中と流れの変化等を把握する。 研究代表者の田才晃は、研究全般を遂行・総括する。研究分担者の杉本訓祥は、研究代表者とともに、各年度の実験計画の精緻化と実施、および解析の実施を担当する。
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