2020 Fiscal Year Annual Research Report
ZEBを実現するための現在と近未来の設計用過酷気象データの開発
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19H02299
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
二宮 秀與 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (90189340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 悟 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40356407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 設計用過酷気象データ / ZEB / 日射直散分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
ZEB(ネットゼロエネルギービルディング)におけるエネルギー収支を根拠として、気象の過酷性を検討した。モデル建物による年間のエネルギー収支を時別気象データと1分値気象データで比較して、太陽光発電、照明負荷に若干の差が生じることを明らかにした。その他の空調、動力については差が見られなかった。このことから時別値データを元に気象の過酷性を評価することとした。1分値気象データについては、2011~2020年の10年間のデータ整理を目的として、1分値データに含まれる欠測を補充する方法について検討した。気象要素毎に欠測補充方法と精度を考察し、ホットデック法による補間が有効であることを明らかした。 将来の過酷気象データについては、温暖化ダウンスケーリングシミュレーションを活用して、2030年代と2050年代の年間の気候予測を行い、その予測結果からエネルギーシミュレーションを実施して空調エネルギー消費量を推定し、その推定結果を基に、ZEH・ZEBの持続可能性を検討した。 またアメダスへの適用を目的として、時別日射量の推定方法について検討し、日照計の種類毎に係数値を同定して推定精度を確認した。その過程で地震や津波の被害で長期の欠測が見られたので、新たに数値予報データ(MSM)と、ひまわりの衛星画像に着目し、時別日射量と大気放射量の推定方法について検討した。その結果、実用的な精度で推定できることを示した。 さらにインドネシアで全天日射量と天空日射量,方位別鉛直面日射量と大気放射量を長期観測している。得られたデータを元に、日射の直散分離,斜面日射量の合成方法について、これまでに提案されている手法が適用できるか検討した。その結果、1時間積算値については概ね良く一致したが、瞬時値についてはばらつきが大きく改良が必要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではZEBのエネルギー収支をより詳細に検討するため、シミュレーションに用いる気象データとして時別値ではなく、1分値や5分値の利用を条件とした。そのためにまず1分値気象データを整理する必要があり、データに含まれる欠測の補充方法について検討した。気象要素毎に欠測補充方法と精度を考察した結果、ホットデック法による補間が有効であることを明らかした。 ZEBのモデル建物を対象として、時刻毎のエネルギー収支を時別気象データと1分値気象データで比較した。その結果、太陽光発電、照明負荷に若干の差が生じることを明らかにした。特に日射量が細かく変動するような日は、1時間値と1分値の差が大きくなることがわかった。その他の空調、動力については差が見られなかった。 将来の過酷気象データについては、温室効果ガス排出シナリオとしてRCP2.6およびRCP8.5を導入したGFDL-CM3の結果を用いて、2030年代と2050年代の名古屋地域(1kmメッシュ)の気象データを整理した。この気象データを用いて、現在のZEB,ZEHが将来に亘って持続できるか確認した。 日射の直散分離と斜面日射量の合成手法については、インドネシアで日射量を観測しており、一年以上のデータを収集できた。得られたデータを元に、日射の直散分離,斜面日射量の合成方法について、これまでに提案されている手法が適用できるか検討した。その結果、1時間積算値については概ね良く一致したが、瞬時値についてはばらつきが大きく改良が必要であることが分かった。また東南アジアへの展開を考慮して、ひまわりの衛星画像による時別日射量と大気放射量の推定方法について検討した。その結果、実用的な精度で推定できることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
1分値気象データの欠測補充について、新たにAIの適用を検討する。これまで開発したホットデック法とAIの推定精度を比較して、欠測補充方法を確定する。その結果をもとに国内の日射観測地点について2011~2020年の1分値気象データを整備する。 過酷気象に関しては、EnergyPlusによるエネルギーシミュレーションを行い、気象データとの関係性を整理し、過酷気象年の選定方法を提案する。そして過酷気象データを用いたシミュレーション結果が、統計的にどの程度の危険率に相当するか明確にする。 将来の過酷気象データについては、これまでの擬似温暖化手法から直接ダウンスケーリング手法、つまり、全球気候モデルの結果を直に都市スケール等にダウンスケーリングする手法への変更を検討する。擬似温暖化手法は、全球気候モデルによる将来の10~数10年平均気候値と、現在の10~数10年平均気候値の差を、現状の再解析/客観解析データに足し込み、それを都市スケール等の将来気候予測の初期値・境界値に用いるもので、異常気象・極端気象として妥当なものが出現するかどうか疑問がある。この観点から直接ダウンスケーリング手法が有効かどうか検討する。 熱帯地域での過酷気象データについては、引き続きインドネシアで日射量と大気放射量を観測し、日射の直散分離と斜面日射量の合成方法,および大気放射量の推定方法について検討する。また気象衛星の画像データを用いて、時別日射量と大気放射量の推定方法を検討する。
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Research Products
(6 results)