2020 Fiscal Year Annual Research Report
Architectural Planning Research for Inclusive Place Attachment
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19H02309
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 ゆりか (今井ゆりか) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20251324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 俊介 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (50339082)
芝田 征司 相模女子大学, 人間社会学部, 教授 (70337624)
松田 雄二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70516210)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 場所愛着 / 回復環境 / 視覚障害 / 学校環境 / 美術館・博物館 / 外国人 / インクルーシブ環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、研究課題に基づいた調査計画を立て、一部の調査を実施した。 ■「課題1:インクルーシブなプレイス・アタッチメントの考察」では、「a.視覚障がい者の教育環境」、「b.発達障がい者の教育環境」、「c.在日外国人の住居環境」への場所愛着の調査を通して、多様な視点からインクルーシブなプレイス・アタッチメントの考察を試みた。 a.については、視覚障害を持つ教員及び学生を対象に、最も好む学内の場所とそこでの行動、その場所らしいものとして思い浮かぶ感覚などをインタビュー調査ならびに予備的アンケート調査により確認した。愛着を抱きやすい環境条件の共通の特徴として、そこでの行動に選択の余地があり、視覚以外の感覚でその場所らしさが感じられる点があがり、本調査への仮説の一部を得た。b.については、Covid-19の影響で行動観察調査が実施できなかったため、文献調査や国際会議等での関連研究の進捗調査,関連発表を行った。それをもとに代替Webアンケート調査の構想を練った。c.については、中国人が愛着を感じる日本の居住環境を明らかにするため、日本在住の中国人を対象としたアンケート調査の質問紙を作成した。その他関連して、オタク層の聖地への愛着とそれをきっかけとした移住の可能性についても考察し、国際会議に発表した。 ■「課題2:プレイス・アタッチメントとの関連を考慮した回復特性の測定尺度作成」では、昨年度に実施した「地域の居住環境の回復特性と愛着についてのウェブ調査」の1次分析をまとめ、概要を国際会議に発表した。 ミュージアム環境についての研究では、大学生を対象とし、回復と愛着を評価する予備アンケート調査を実施した。その結果、回復・愛着とも高い得点が得られ、ミュージアムが回復及び愛着の場所として機能し得ることが確認され、学会発表を行った。また、この結果をもとに本調査のWebアンケートを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Covid-19の影響で令和2年度の計画にあった調査実施が縮小したが、一方で①関連研究・学会での情報収集、②一部の調査の小規模実施及び昨年度行われた調査のデータの1次分析、と③国際会議・学会大会での中間成果発表、学術誌での研究成果の発表ができた。 具体的に、①課題1の「b.発達障がい者の教育環境」について、コロナでの学校閉鎖などの状況から、当初予定した児童の休み時間の行動観察調査が実施できず、遅れが生じた。一方で文献調査の充実や、学会大会での情報収集の成果の発表、代替Web調査の新規企画の検討など多少なりとも研究を進捗させた。 Covid-19の制約のなか、一部については②調査の小規模実施と分析ができた。課題1のa.視覚障がい者が愛着を抱く場所の環境条件については予備的調査を実施した。当初予定より調査人数が少なかったが、結果から本調査に向けた仮説を得た。課題1のc.在日外国人の住居環境への愛着調査は、令和元年度に作成したアンケート用紙をWebアンケートに変更し調査を実施し、回答を回収中である。課題2では、地域の回復測定尺度への回答データの1次分析を概ね予定どおりにまとめて国際会議で発表した。またミュージアムにおける調査も、美大生26名を対象に予備的に実施した。得られたデータをもとに本調査の準備を進めた。 予定より進んだのは、③メンバー全員が人間環境国際学会IAPS2020大会に参加し、課題1のb.とc.課題2に関する発表を行い、また国内の人間・環境学会大会で課題2について発表したこと。学術誌で課題1の一部の成果をまとめたことである。 全体に、課題1では当初計画した調査の代替案を計画せざるを得ない状況となり、遅れが見られたが、令和3年度には代替案が固まり調査が進む予定である。活動が制限された期間にそれまでの成果の学会発表等を充実できたため、研究全体としては概ね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Covid-19感染拡大の影響で、令和2年度の障がい者の場所愛着に関する各種調査が実施不可能となり、予定にはなかった調査代替案の検討がなされた。令和3年度以降は代替案のWeb調査等により、解明できる範囲でインクルーシブな場所愛着についての検討を行う予定である。対面でのインタビューや観察・質問紙調査と比較して、Web調査やZoomでの回答は回収率が極めて低く、対象者の限られる障がい者の調査は小規模にならざるを得ないことが予想されるが、小規模になっても調査を実施し、場合によっては質的な記述・分析を試みる方針である。
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