2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on advanced use of BIM to facility life cycle management
Project/Area Number |
19H02320
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
志手 一哉 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (60505353)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | BIM / 分類体系 / 建築仕様 / ワーク・プラクティス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、BIMを前提としたワーク・プラクティス、建物情報の分類コード体系、各種の仕様を生成して共有する仕組みについて国際標準を想定し、それに日本の建築生産プロセスをすり合わせ、施設資産の評価手法を加味させた、実行可能な「BIMライフサイクルマネジメントのプラットフォームとした情報共有の仕組み」の提案が最終目的である。初年度である2019年度は英国を中心とした欧州の状況把握を目的とした調査を遂行した。現地調査では、北欧(フィンランド、スエーデン、デンマーク)においてBIMの標準化に関する動向、英国においてBIMに関する標準の実務での適用状況、英国のBIM標準の適用を図っているベトナムにおいて建設現場での適用状況などを確認した。加えて、英国のUniclass2015、Plan of Work 2020の文献調査を通じ、分類体系やワーク・プラクティスとBIMの関係を検討した。 分類体系に関する調査では、オープンなBIMを標榜している北欧(フィンランド、スエーデン、デンマーク)で様々なソフトウエアでデータをやり取りすることを目的に建築部位と主な材料の組み合わせを簡易に入力できる分類体系を自国で整備しつつある状況、英国では従前の分類体系が継続して利用されているもののUniclass2015の認知が徐々に広まりつつある状況を把握した。また、ベトナムではプロジェクトの発注者の要求に合わせて分類体系を利用しなくてはならないため自国での標準を定めない方針に転換していると実務者へのヒアリングで確認をした。英国における建築仕様書作成では、Uniclass2015を中核として利用環境が整備されつつあることを設計事務所や分類体系や仕様を管理しているNBSへのヒアリングから把握した。当初の研究計画通り、英国を中心とした欧州におけるBIMの動向について現況を把握した進捗の状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北欧では、設計事務所、建設会社、BIMコンサルタント会社、学識経験者の計12か所を訪問し、フィンランド、スエーデン、デンマークにおけるBIMの動向、分類体系の利用、仕様書の作成方法、設計から維持管理におけるBIM関連ツールの提供状況についてヒアリングを実施した。英国では、英王立公認不動産鑑定士協会(RICS)、仕様書やBIMの利用環境を整備しているNBS、BIMと工業化の関係を研究している学識経験者、設計事務所、コンストラクションマネージャ、QS事務所など計8か所を訪問し、公共工事にBIM Level2を義務付けた「BIM Mandate」、BIMに合わせて改変された「Plan of Work 2020」「Uniclass2015」、ISO19650シリーズの原型であるBIM Level2の標準的な進め方「PAS1192-2」などが、実務でどの程度広がっているかについてヒアリング調査をした。調査では、全ての公共工事でBIMが実行されていること、民間工事ではBIM Level2を意識せずに設計事務所とCM企業が各々の視点でBIMを実行している状況を確認した。ベトナムでは、2020年の交付を目指して整備が進められている英国のPAS11921-2を範としたBIMガイドラインの試行状況を把握するために、BIMコンサルタントと建設会社を訪問した。2018年から2年間で50件の試行プロジェクトを実施する計画で、予定を上回るペースの件数で試行が進んでいること、当初の計画を修正しながら試行が進められている状況を把握した。 初年度である2019年度の調査は計画通りに進んでおり、多くの情報を入手することができている。それらの一部は2020年日本建築学会大会(関東)の学術講演会で発表すべく梗概を投稿している一方で、年度末の新型コロナ禍の拡大もあり整理に着手できなかった部分もある。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、新型コロナウイルス禍の収束が不透明なため、当初の計画で予定していた米国の現地調査を翌年度に延期する方針である。その代替として、2019年度に調査した北欧、英国、ベトナムのBIM動向について、未着手であった入手資料の整理に加え、文献調査を中心に考察を深める内容に当年度の研究計画を変更する。具体には、英国のNBSが提供している仕様書作成ツール「NBS Chorus」を実際に使用したリバースエンジニアリングに加え、英国のプロジェクトガイドである「Plan of Work 2020」、北欧調査で把握した各国がBIMに合わせて進化させている分類体系(BIM Type Code、CoClassなど)、ベトナムにおけるBIM実証プロジェクトの成果報告などについて文献調査を中心に分析を実施する。特に注目したいのは、2018年に公表されたBIMを活用して様々な情報をマネジメントするための規格であるISO 19650シリーズと各国で得た情報との関連である。また、IFCやCOBieなど国際標準的なBIMの属性情報と建築仕様の関係に着目した分析を行い、それらのデータベースとしての利用可能性の考察を通じ、建築のライフサイクルをサポートするデータの体系について検討を行う予定である。加えて、建築仕様の段階的な検討や建物の資産価値とBIMやそれを取り巻く情報環境との関連についてSIT総研グローバル建築技術研究センターで考察を深めていく予定である。これらの研究成果が得られれば、研究代表者が所属しているBIMライブラリ技術研究組合や日本建築積算協会情報委員会のBIMを活用した積算・コストマネジメントの環境整備協議会と共有し、日本におけるBIMによる情報共有の仕組みについて議論することを想定している。
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