2021 Fiscal Year Annual Research Report
International Comparative Analysis regarding Environment Management of Inclusive education for children with Profound and Multiple Disabilities
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19H02321
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
菅原 麻衣子 東洋大学, 福祉社会デザイン学部, 教授 (90361790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
是枝 喜代治 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (70321594)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インクルーシブ教育 / 障害児 / 学校施設計画 / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、重度重複障害のある子どもにとってのインクルーシブ教育環境のありようを追究するものである。早くから統合教育を進めてきたイタリア(西欧)、人権・教育保障の法整備を強力に進めてきたカナダ(北米)、高福祉国家かつインクルーシブ教育が進んでいるスウェーデン(北欧)、そして世界の潮流とは異にして特別支援教育に重きがおかれた日本、これら4か国を調査研究フィールドとした。このうち、本年度ではスウェーデンを中心に研究活動に取り組んだ。 前半は新型コロナウイルス感染症の影響により現地調査が難しかったため、オンラインによる学校視察を2022年6月に実施した。視察対象はストックホルム市の北部に位置する小中学校であり、通常学校と特別支援学校が併設されている学校である。保護者からの評価も高く、両学校の連携が非常に良好な例として視察を実施した。複数の棟からなる学校であるが、両校を行き来できるルートや共有スペースを確認し、全体の構成とその運用を捉えることができた。 また後半は現地調査が可能になったことから、2022年12月にアルビカ市の中学校を現地訪問し、授業・施設見学、および学校長・市職員・教員へのインタビュー調査を実施した。この中学校も特別支援学校を内包する制度および学校施設計画であり、重度重複障害から、重度、軽度の生徒に合わせて教育手法や学校整備が段階的に整えられていた。そのグラデーション的な整備手法は日本の学校施設整備においても非常に参考になる点を多く含む。またスウェーデンにおいては発達障害のみの場合、特別支援学校ではなく通常学校への通学が基本とされているが、障害特性に合わせた授業スタイルや学習空間の工夫もみられ、家具のデザインや配置においても多いに参考になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ前の当初の計画からすると現地調査実施が大幅に遅れたが、今年度の調査計画に対しては概ね計画を実行できた。スウェーデンならではのインクルーシブ教育の定義や捉え方、また制度の特徴が捉えられ、知的障害については明確に特別支援学校と位置付けるスウェーデンのスタンスは、日本におけるインクルーシブ教育の議論においても深く考えさせられるものである。特に重度重複障害のある子どもにとって、通常学校で学ぶ意義とは何か、何を共に学び、何を個別で学ぶかについて、考え方の整理やそれに伴った教育手法・環境整備の在り方を見出すことが今後強く求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
カナダでの現地調査に続き、スウェーデンでも現地調査を実施することができたが、やはり国ごとの教育や障害者福祉、権利擁護に関する社会背景・歴史・考え方が異なることがあらためて捉えられ、これらを整理した上で、日本におけるインクルーシブ教育の推進と環境整備の方針や手法を見出す必要がある。特に重度重複障害のある児童生徒は、他の児童生徒と何を共に学び、それにどのような支援体制や環境が必要か、丁寧に捉えることが求められる。当然ながら物理的な環境のみでは語れないため、特別支援教育学専門の研究分担者と共に学際的な議論を進めながら、国内外で研究発表の機会を設けていく。また最終的には本研究の全体成果報告となる書籍出版につなげていきたい。
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