2021 Fiscal Year Annual Research Report
Methodological Research for Reconstruction of History of Western Architecture and Theory of Architectural Design based on Tectonics and Materiality
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19H02328
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 耕一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30349831)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 西洋建築史 / 建築理論 / 物質性 / 構築 / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の基盤となっているのは、2018-2019年度にかけて執筆したweb連載論文「アーキテクトニックな建築論を目指して」(全12回)である。このなかで研究代表者は、建築史を「素材」と「構築」という2つの側面から描き直す可能性を見出し、2019年度から、現在の研究課題「構築と物質性に基づく西洋建築史・建築意匠論の再構築のための方法論的研究」を進めてきた。2021年度の研究では、研究会を重ね、「素材」と「構築」という観点から建築史学を再評価することが、近代建築史あるいはモダニズムを抜本的に描き直すことにつながる可能性が明らかになってきた。なかでもモダニズムの主要コンセプトであった「最小限、低コスト、シンプル」に対して、前近代から19世紀までの建築を「過大さ、高コスト、ラグジュアリー」という観点で捉えたとき、本研究課題の重要な結論が見えてきたところである。20世紀の建築が拒否してきたラグジュアリーという観点を建築史と建築理論に持ち込むことによって、本研究課題が目指していた「素材」と「構築」という物質的な観点から建築を捉え直す可能性が切り拓かれてくるであろう。 具体的には以下の点が、今年度の研究成果として重要である。 産業革命以降のマニュファクチュアによって実現した、布地を中心とした建築のインテリアと深く結びつくプロダクトを再評価することで、21世紀のデジタルファブリケーションを歴史的に位置づけること。 19世紀のリヴァイヴァリズムと、20世紀のモダニズムを、様式的あるいはデザイン的な観点からではなく、社会階層的な観点から再評価すること。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度には、いくつかの講演を除けば、具体的な論文発表や学会発表はしてこなかった。その点において、単年度の成果としては少々物足りないが、2021年度の研究では、最終年度である2022年度に1冊の書籍にまとめて発表することを目標に、主として文献や資料の調査に励んできたことから、まとめに向けての研究成果は十分に蓄積できている。 本研究課題を研究代表者自身は「構築と再利用の観点による西洋建築史学の再構築のための基礎研究」(日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(C)) 2015-2018年度)の発展的継続課題と位置づけているが、これまでの調査によって、「素材」と「構築」によって建築史と建築理論を再考することは、たしかに時間の問題とも接続される観点であることが明らかになってきている。従来の建築理論が抽象的で観念的な側面から建築を考えがちだったことに対して、具象的で物質的な側面から建築を考えるためには、素材や構築に着目することが重要であり、またその結果として建築の時間的側面が浮かび上がってくる。そうした点を鑑みながら、最終年度のまとめにつなげていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2022年度は、これまでの研究のまとめに注力する。本研究課題を、研究代表者自身は「構築と再利用の観点による西洋建築史学の再構築のための基礎研究」(日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(C)) 2015-2018年度)の発展的継続課題と位置づけている。この時の研究成果は『時がつくる建築:リノベーションの西洋建築史』(東京大学出版会、2017年)として刊行したが、現在の研究課題においても同様に、書籍にまとめて刊行する予定としている。ここまでの研究成果を大別すると、産業革命以降の生産の問題と19世紀のインテリアの問題を核とする近代建築と物質性の問題と、西洋における通史的な時間スパンの中での構築文化の変遷について、研究を進めてきた。これらの研究成果を、建築史・建築理論の観点から論理的にまとめ、これまでの研究成果の社会発信を強めることを目標とする。
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